体長 4cm
今では考えられないことながら、手のタレントができるんじゃないか、と友人にホンキで言われたことがあった。
大学生の頃である。
身長のわりに大きく、指はスラリと細く長い私の手が、手だけとはいえモデルになれるほどだというのだ。
いわゆる手タレってことだろう。
身体的なことで褒められたことといえば、あとにも先にもそのときくらいである。
あれから幾星霜…。
今あらためて、石川啄木のようにわが手をジッと見てみる。
そこには、ほれぼれするほど立派な農婦の手があるのだった。
でかいうえに、かつてはスラリと細かった節はゴツゴツし、加齢とともにしわも増え、おまけに職業柄爪はバキバキだ(海に浸かりすぎると爪がやわくなる)。
ミトじぃの手になるまで、あともうひと息かもしれない。
こまめなケア以外に何の労働もしていなさそうなツルツルの手を見るたびに、うらやましいため息が漏れる。
さて、冒頭の写真のシャコは、フトユビシャコの仲間かな…と思っていろんな種類の科名や属名などいろいろ検索してみたものの、いっこうにビンゴ!に巡り会わない。
すっかり肉体労働者の指になった身としては、フトユビシャコの名に妙に親近感を覚えてしまうため、小さなシャコとみるとなんでもかんでもまずはフトユビシャコの仲間と思ってしまう私。
でもこのシャコは、ひょっとすると学生の頃の私なら親しみを覚えたかもしれないホソユビシャコの仲間かもしれない。
それでもどうしてもビンゴ!画像に出会えず、ウニシャコの仲間でも他の仲間でも見当たらず、これまで他のシャコ類では根拠はテキトーながらもなんとか種類の見当を(勝手に)つけていたというのに、今回ばかりはさすがにギブアップ。
というわけで遺憾ながら正体不明のこのシャコは、砂底の根で何か別のモノを観ていた時に、シュルシュル…と動いている様子が目の端に見えたもの。
よく見ると、何かを捕えて食べていたっぽい。
獲物はどうやらカニかコシオリエビのようだ。
ゆっくり味わいたいけどカメラが気になる…ということだったのか、このあとすぐにシュルシュル…と場所を移動して姿を消してしまった。
ちなみに冒頭の写真はホントは天地が逆さまで、シャコ自体は逆向きになってハマサンゴの裏側にいたから、ホントは隠れているつもりだったのかもしれない。
そんなところへ突如ストロボ光に照らし出されたものだから、のんびり食事どころではなくなってしまったのだろう。
例によってこのシャコとの出会いも、今のところこれ1度きり。
小さいシャコはフトユビシャコの色違い…と思い込んでいたばかりにそれぞれの一期一会をさほど大切にしていなかったことが、今さらながら悔やまれるのだった。