甲幅 15mm
普段あまり行かないポイントでナイトダイビングをしていたとき、岩場の砂だまりのようなところでこのカニを見つけた。
薄っぺらい甲羅にすじ模様がついているという色形をしたカニの姿は90年代後半当時の一般向け図鑑ではどこにも見当たらなかったので、これはさぞかし珍しいカニなのでは…と少し興奮したのを覚えている。
後年刊行された図鑑で知ったところによると、実際はそんなに珍しいものではなく、浅場の転石の下などに多いらしい。
日中はいわゆるメクリスト御用達のカニさんのようだ。
ただ、甲羅の模様にはバリエーションがあるようで、冒頭の写真のように縦に白い帯が入っているもののほか、犯行現場で採取される指紋のような模様になっているものや線ではなく点々が多いものもいるようだ。
同じ種類に出会う機会は多くても、ひょっとすると指紋と同じく個体ごとに確実に模様が違っていたりして。
人間の指紋が一生変化することはないように、遺伝子に刻まれた紋様は、たとえ古い殻を脱ぎ捨てても変化しないのだろうか。
ところでウスハオウギガニは、その名のとおり甲羅が平たく薄いのだけど、後ろから見るとこんな感じになる。
なにぶん四半世紀くらい前に撮ったものだから、冒頭の写真と同一個体かどうかという記憶がまったく無いものの(同じ日に撮ったのは間違いない)、もし甲羅の紋様が指紋同様個体ごとに違っているのなら、間違いなく同一個体であることがわかるのだった。