(Stenopus tenuirostris)
体長 25mm
伊豆で潜っていたとき、あまりの寒さにドライスーツを買った。
その進水式のとき、どんなデザインか興味津々だった連れの人々には、
「メーカーのロゴも抜いてもらったし、地味ですよ」
とあらかじめ言ってあった。
ところがいざエントリー前にお披露目すると、その人たち腹を抱えて笑うのである。
私のドライスーツが派手だということらしかった。
黒地に大好きな紫色のグラデーションのカットを入れたデザインは、私としてはとっても気に入っていたのに…。
その日は一日バイオレット姫と呼ばれてしまった。
さて写真のエビは、その紫色をふんだんに配した、その名もバイオレットボクサーシュリンプ(通称)。
バイオレットといいながら、冒頭の写真では青色が目立っている。でもこれは、写真のエビが抱えている卵がブルーだから。
青い卵を抱えていても、正面から観ると…
ちゃんとバイオレット。
通称にボクサーとあるのは、このエビが特別にあしたのジョーのようにボクシングばかりしているわけではなく、オトヒメエビの系列を英名ではボクサーシュリンプと呼んでいるから。
学名はつけられているものの( Stenopus tenuirostris )、まだ和名はついてはいない。
乙姫に対してムラサキノキミエビってのはどうかな……。
このエビの水納島初記録は冒頭の写真の個体ではなく、ちょっと深い根でだんながゲストを案内中に発見したものだ。
後刻だんなはバイオレット…かも、と自信なさげに言っていたから私は期待半分だったのだけど、ゲストに撮ってもらったというデジカメ写真をその夜見せてもらったところ、たしかにバイオレットボクサーシュリンプだった!
これは撮りに行かねば!(信じていなかったことは即座に棚に上げる)
後日さっそく訪れてみると、あいにく紫の君はとても狭い穴に住んでいて、とても一眼レフのハウジングが入るスペースはなく、エビ自体も穴の奥のほうに隠れてほとんど姿が見えず。
そのくせゲストを案内中に訪ねてみると、とっても撮りやすそうな穴の出口付近にいる。
その繰り返しで、地団太踏みまくりという状態に何度も見舞われた。
もっとも、日中でも分厚い雲が空を覆っているときなど海中が暗い時にはけっこう外に出てきたりすることをその後知るに至り、そういう時であればフツーにデジイチハウジングでも撮れることもわかった。
ただしレアなエビだけに、いつでもいるというわけではないですからね。