「徒然海月日記」から海の話が含まれている日記のみ抜粋したバックナンバーです

2010年 1月9日(土) 晴れ

北東の風 少し波あり 水温21度

 今日から数日海況が安定するのを見越し、実は昨日、自分の船で帰ってきた。

 やむにやまれぬとはいえ、渡久地港で1人寂しく年を越させてしまったミスクロワッサンに、遅ればせながらお正月のお神酒を。
 いじけていたかもしれないから、これで機嫌を直してもらおう。
 そして……。

 2010年の潜り初め!!
 年末のうちに入院生活から無事復活していたハウジングの進水式でもある。さてさて、今年最初の被写体は………
 この人だ!!

 ハラスジベラのメス……。
 エントリー後、ついに21度に下がってしまっていた水温にしばしひるんでジッとしているときに、目の前をツィー………と泳いでいたのでパシャッと。
 うーむ……………それにしても我ながらなんとも地味な選択。人生で初めてこの魚を撮った気がする。
 でもまぁ、ハラスジベラちゃんがウンチをしているところに免じてお許しあれ。

 水温が低いのであまり活動的に遊泳する気分にはなれず(首筋から冷たい水が入ってくるのがイヤ<つまりそれだけ痩せたってこと♪)、浅いところをイザリウオ=カエルアンコウのようにジワリジワリ進んでいると、またマニアックなベラに目がいってしまった。

 マナベベラの大人になりかけ君。
 大人になると超地味なこのマナベベラは、子供の頃は↓こんな感じ。

 大人もこの白黒の子供もこれまで何度も観たことがあったけど、大人になりかけのマナベベラなんて、観たことがなかった………かどうかは記憶が怪しい。少なくとも撮ったことはない。
 そんな大人になりかけ君が、白黒の子供と一緒に泳いでいたので思わずパシャッと。
 ストライプは青くてきれいだし、縞模様も熱帯魚っぽい。
 モラトリアム青年の「大人になりたくない…」という声には、何をバカなことを…と聞く耳持たないものの、このマナベベラの大人になりかけ君がそういうなら、その気持ちはすごくよくわかる。

 水温が低すぎるせいか、このところずっと荒れていたせいか、海底の白砂が文字通り真っ白で美しい。白い砂っていいなぁ……ホワイト&ホワイト。

 その砂底にある根では、ユカタハタのカップルがなにやらアヤシゲな動きをしていた。僕は寒さに震えつつ背を丸めて海底にうずくまっているというのに、やたらとお熱いムードを周囲に発散させている。

 こんな感じで、しきりとオスがメスを誘いまくっていたのだ。
 ところがメスのほうはその気がないらしく、ヒラリヒラリと身をかわす。そのくせ逃げてしまうことはなく、思わせぶりな視線をオスに向けてくる。
 血気にはやるオスは、再び優しげに寄り添おうとし、また同じようにスルリと身をかわされる………

 そして!!
 ついに業を煮やしたオスは、急速にそこらのオッサン化してしまった。

 ………ユカタハタたちにもいろいろ事情があるようだ。

 事情といえば、お気づきの方もいらっしゃることだろうけど、ついにクロワッサンは今年「復活編」を迎えてしまった。
 もちろん砂移動の目途が立ったわけではない。
 日経ビジネスふうに言うなら、「本業回帰は滅びの道か?」といったところだろう。

 そもそも、雑貨屋さんを主軸にしよう作戦は、桟橋が使えなくなってダイビングの仕事ができなくなっても、なんとか島で暮らしていけるように……という方向性だったわけだけれど、すみません、連絡船が3月一杯まで1日2往復じゃ、とてもじゃないけど無理。

 で、この桟橋の状態でもあえてダイビングを、ということは、ゆくゆくは「島で暮らしていく」ということを優先していられなくなる、という覚悟が必要なわけで、「復活編」といいつつも、どこかの国の首相のように、実際は揺れ動いていたりする。
 桟橋の砂の移動が実施されれば、こんなことで悩んでいる必要はないんだけどなぁ……。

 縁起のいいことに、潜り初めからアオウミガメ君に出会った。
 でも、なんだか彼も何か悩み事を抱えているようだった。

 きっとカメさんにもいろんな事情があるのだろう。