「徒然海月日記」から海の話が含まれている日記のみ抜粋したバックナンバーです

2010年 1月19日(火) 曇りのち晴れ

南東の風 少し波あり 水温21度

 先週の鬼のような寒さに比べれば、今週はものすごく暖かく感じる。
 おかげで真冬だというのに、海に行こうという気にもなる。

 昨日に続き、今日もハナダイたちと戯れることにした。
 同じ場所に行ってみたところ、すでにシラタキベラダマシはいなくなっていた。本来は潮通しのいいドロップオフ環境で観られるものらしいから、昨日観た砂地の環境というのは、彼にとってはイレギュラーだったのだろう。彼女にフラれたかなにかして、たまたま立ち寄っていただけだったに違いない。
 ん?てことは、それを観ることができた僕は、運が良かったのか………。

 さて、昨日は主にキンギョハナダイに注目していたが、同じハナダイ類といっても、キンギョハナダイは岩場でもリーフエッジでも観ることができるのに対し、水納島でのケラマハナダイはまず砂地の根でしか観られない。いわば砂地を代表するハナダイだ。

 魚は魚だ、という体育会系的な理解力しかない方にはどれも同じに見えるだろうけど、けっこう特徴的なフォルムをしているので、お魚好きな方にはすぐに他種と見分けがつくようになる。

 これはオス。昨日も書いたとおり、どうも水温の低い時期のほうが求愛行動が活発で、根の上方のそこかしこでメスに対してアピールしまくっている。

 背びれの赤いポッチリをはじめとする体の色は一定ではなく、自らをアピールするときにはこうして色づいているけれど、ややもするとコントラストを欠いた色合いに変わってしまう。

 また、メスに対して求愛行動をしているときは、白っぽくなって各ヒレをすぼめるので、泳ぎ自体は観ていて楽しくても、止まった画像になると冴えない絵になってしまいがちだ。
 どうせ撮るなら、色づいているときを選びたい。

 また、ときにはまるで群れの中のメス情報でも交換しあっているかのように、オス同士が集まることがある。

 また、もっぱらメスたちは根にかかる流れの上流側で餌を食べているのに対し、オスは選ばれたものたちだけなのか、実力者たちだけなのか、餌のプランクトンを得るのに都合がいい上流側にいるのは一部だけで、下流側でおとなしく食事をしているオスがけっこういるのが面白い。

 で、今日はそんなオスたちを観ていたら、やたらと各ヒレを損傷している者たちが多いことに気がついた。
 シーズン中でも、よくそれで生きていられるなぁ的損傷を蒙っているハナダイ類を観ることはあるけれど、傷ついている個体をこうも頻度高く目にすることはあまりない。
 はて、なんで??

 その答えはすぐに判明した。
 なにやら視界の片隅で激しい動きがあったので、目を向けてみると、ケラマハナダイのオス2匹が1対1の男の戦いを繰り広げていたのだ。

 こういう場合、シャッターチャンスを逃すことで定評のある(?)僕が写真を撮ろうとすると、たちまち彼らはナニゴトもなかったかのようにケンカをやめてしまう、というのが常。
 ところがこの日は違った。

 近寄って何度も何度もシャッターを押しても、激しく噛みあって絡み合っては離れ、またぶつかり合っては離れ、という動作を繰り返しているではないか。

 その激闘の模様を実況中継!!


左「フフ…遅いな!」


右「よ…避けたのか!?」


左「魚体の性能の差が……」


左「戦力の決定的差ではないことを……」


左「教えてやる!!」


右「言ったな!?」


さあ、勝つのはどっちだ!?

 お互い相当イラついているようで、もういい加減にそのまま遠くへ離れてしまえば?と僕が思うくらいになっても、再びガン飛ばしあったかと思うと、ガツンッと噛み付き合う始末。

 ララァを巡る遺恨は、当分の間消えることはないようだ……。