「徒然海月日記」から海の話が含まれている日記のみ抜粋したバックナンバーです

2010年 1月20日(水) 晴れ

南東の風 波あり 水温21度

 先週末の新年会にはなちゅらる院長も来ていたので、ここ3ヶ月弱に渡るトレーニング(?)によって、シーズン中とは比べ物にならないくらいに急速に疲弊した我が体の不調箇所を訴えたところ、その場で文字通りいっちょ揉んでくれた。

 するとどうだ、油がきれてギシギシいっていた下半身が、まるでコンペイ島でマグネットコーティングをされたRX−78のように、実にスムーズに動くではないか。

 いやあ、さすがプロ。
 どこかのダイビングサービスとは違って、プロフェッショナルとはこういうものだということをまざまざと見せつけられた。
 それにしても、その揉んでもらっている間の気持ちのいいことといったらない。

 ホゲーッと温泉に浸かっているかのような心地よさ……。
 これを日々繰り返していれば効果はさらに持続し、ここまでのオフを快適に過ごせたのだろうなぁ…。

 世にマッサージアイテムは数あれど、結局のところ人の手に、それもプロの手に勝るものなし。院長の施術は、ジャパネットたかたでは手に入らないのだ。

 魚たちの世界にもプロがいる。
 それも、数多いる魚たちのほとんどが彼の患者だ。
 その施術のほどがどれほど優れているかというのは、患者さんたちの表情を見れば一目瞭然。

 近寄るダイバーを誰彼かまわず攻撃する日々を送っているミツボシクロスズメダイは、実は満身創痍なのである。そんな体を優しくケアするプロフェッショナルこそ、名医ホンソメワケベラだ。
 あの攻撃的な魚が、相手が名医になるとここまで身を委ねるとは……。

 同じくホンソメマッサージを受けるメガネハギも恍惚としている。

 ホンソメワケベラは魚についた寄生虫や食べかすなどを取り除いている、という面だけが有名だ。
 たしかに、ホンソメワケベラたちはもっぱら他の魚の口周りやエラ周辺を念入りにチェックするし、実際に彼らの行動を「クリーニング」と呼ぶ。
 けれど、実は彼らが他の魚にピッタリと寄り添えるヒケツは、その絶妙な腹ビレタッチにある。
 ホンソメワケベラに手をクリーニングしてもらったことがある方ならきっとご存知だろう。彼らは口で何かをついばむ前に、近寄った相手に寄り添いながら、腹ビレを細かく素早く動かしてマッサージしてくれるのである。

 魚たちはこの腹ビレマッサージがこのうえなく気持ちいいに違いない。
 だって、掃除してもらうだけでこんな顔にはならんでしょう、フツー。

 気持ちいいのだ。<バカボンパパふうに。

 そんなわけで今日も海に行っていた。
 真冬の1月に3日続けて潜りに行くなんて、ひょっとすると史上初かもしれない。それくらいに今週は暖かく、海況がいい(南東の風なので)。

 暖かいので、潜り終えたそのあしで、渡久地港まで行ってきた。
 渡久地港は河口の港のため、放っておくと土砂が溜まってしまうので、時おり県の予算で浚渫している。
 今回の浚渫では、我々が台風避難時用のアンカーを落としているあたりがその区域に入りそうだった。区域内であればアンカーを移動させなきゃ作業中に失くされてしまうから、そのチェックがてら、区域内だったら移動させようという次第。
 今月末には作業が始まるという現場スタッフの話だったから、石垣へ発つ前に行かなきゃならなかったのでちょうどよかった。

 渡久地に着き、アンカーから繋がるブイをとって船をアンカーの真上に持ってきてみると、幸いなことに区域にはギリギリ入っていなかった。
 一般的に公共工事の場合、設定された区域より狭い範囲で作業をすることはあっても、わざわざ区域を越えてまで余計な仕事をしはしないだろう。よほどサービス精神旺盛な業者でもない限り、きっとアンカーは無事だ。

 まぁつまりは無駄足・無駄燃料だったわけだが、グリコのオマケがついていた。
 船に引き上げたブイに、なんと小さな小さなイザリウオ(カエルアンコウ)がついていたのだ。

 本来の用が済み、じゃあイザリウオもサヨウナラ…………というのでは芸がない。なにしろ船上には、さきほどまで海中で使っていたダイビング器材もカメラも揃っているのだから。

 しかしだからといって、透明度50センチにも満たない渡久地港内でってわけにもいかない。
 ならばどうする………?


左の肌色部分は、私の人差し指の爪です

 ……こうした。
 これまでの人生で出会ったイザリウオのなかで最小記録樹立。
 もちろん、撮影地は…………………水納島(桟橋脇)。

 河口というやや汽水環境から、7キロの旅の果てにいきなり海にやってきたイザリウオチビターレ。さてどうなることかと思いきや、ホンソメワケベラに勝るとも劣らない僕の絶妙タッチにより、思わずアーン…………

 ……んなわけはない。

 まぁしかし、これで生態系が狂ってしまう……なんてこともまずないだろうし、彼にとっても、透明度50センチ以下の渡久地に住むよりは、島のビーチのほうが快適だろう。<いいわけ。