「徒然海月日記」から海の話が含まれている日記のみ抜粋したバックナンバーです

2010年 3月23日(火) やや黄砂

南東の風 波ありのち穏やか 水温21度

 風がやや強まったものの、今日もいい天気。
 ダイビングサイトのニュースコーナーでお知らせしているとおり、ついに昨日から始まった砂移動。
 早くもその濁りがリーフの外へ流出しているかと思ったら、満潮に向かうタイミングのおかげか、まだそれほど掘り起こしているわけではないせいか、リーフの外にはまだ影響はなさそうだ。

 というか、今日はすこぶる水がきれいだった。
 濁っているのは黄砂に覆われた空だけだ。

 もちろんこの日は昨日のリベンジ。
 ストロボが一つになってしまい、もはやこの先ワイドの写真をストロボを使って撮ることは不可能になってしまったとはいえ、マクロ写真であれば1灯のほうがかえってシンプルでいい。<負け惜しみでなく。

 で、場所もタイミングも同じなので、流れはそれほどなく、昨日同様ハナゴイたちはのどかな春の散歩を楽しむかのように優雅に群れていた。
 そして今日もヒレを広げる。

 広げた背びれの色合いが個体ごとにここまで違うと、それで個体識別が可能になりそう。しないけど。

 ちなみに、昨日は触れなかったけど、彼らのメスはこんな感じ。

 このメスの周りではオスたちはヒレを広げつつ激しい動きでアピールする一方、オス同士が出会うと、たまにケンカもするけど、極めて緩やかに儀礼的にヒレを広げあう。優位を確かめ合っているのだろうか。

 というわけで、二日続けてハナゴイのヒレ全開状態を追い求めてしまった。
 まぁしかし、僕はどういうわけか魚たちがヒレを広げた姿、というのを偏執的に好む傾向があるのだけれど、一般的にはどうでもいいことなのだろうなぁ……。

 ハナゴイで30分粘っていても、水深5、6mだから空気はほとんど減っていなかった。
 なので、ちょっとばかし深いほうへ。
 すると、砂地でアオヤガラが静かにたたずんでいるのが見えた。
 砂地で暮らすハゼたちを狙っているのだ。

 気のせいかもしれないけど、彼らがこうして砂地のハゼを狙うようになったのは、98年の白化でサンゴが死滅してからのような気がする。リーフ際では餌となる小魚が減少し、やむなく砂地方面に活路を見出したのではあるまいか。

 その後サンゴは順調に回復しつつあり、リーフに集う小魚たちも随分増えてきたものの、彼らアオヤガラは身につけた習性を今も大事にしている………のだろう。

 巣穴から出てくるハゼをジッと待つその忍耐力は、バズーカ砲のようなレンズをつけて砂地に這いつくばるマニアックカメラ派ダイバーですら遠く及ばない。
 なにしろ、待機中の彼を撮ろうと近寄っていったら……

 こんなに近寄ってもなお逃げないのだ。
 こんなに寄っていいのなら、是非ワイドで撮ってみたい………あ、もう当分ワイドでは撮れないんだった(涙)。

 そのほか、さすが春という光景も。

 クッキリ目が出来ている卵のケアをするクマノミのオス。
 クマノミ類のなかでも最も低水温に適応しているクマノミは、この21度の水温でも平気で繁殖行動をしている。
 真冬の間でも低頻度で行っているのかもしれないけれど、でもやっぱり、彼らが卵を守り始めると「ああ春なのね…」という気がするのだった。

 いい日和の中でダイビングを終え、午後ものどかに過ごし、一汗かいて美味しいビールを……と今日も一日が平穏のうちに終わるはずだった。
 ところが。
 美味いビールのためのジョギング中、突如軽トラに乗ったうちの奥さんが現れた。
 はて、どこに行くのだろう?
 と見やっていると、どうやら僕に用事があるようだ。

 こういう場合は、ろくでもないことと相場は決まっている。

 ハブが出たか?
 テンちゃんが空高く舞い上がってどこぞへ消えたか?
 床が抜けて家が壊れたか?
 津波警報が出て即刻避難か?

 どれもこれも冗談のようでありながら過去に起こったことばかりだから、今さら慌てるほどのことでもない。
 しかし事態はすでにオタマサ化していた。

 はたして何が起こったのか!?