「徒然海月日記」から海の話が含まれている日記のみ抜粋したバックナンバーです

2010年 5月7日(金) 大雨

南の風 べた凪ぎ 水温23度

 入梅した昨日の空は、梅雨入り宣言が出た途端に晴れ渡り、さすが沖縄気象台、と逆に感心したものだったのに、今日は数年ぶりに梅雨入り早々から

 梅雨!!

 と力のかぎり天が叫んでいるかのような大雨。
 こんだけ雨を降らせれば梅雨も本望だろう。

 とはいえ、朝方こそ雷が轟いていたけれど日中は雨のみで、しかも海はべた凪ぎ。
 ことダイビングの場合、晴れ渡る空の下で激荒れの海よりは、たとえ雨が降っていようともべた凪ぎのほうがストレスは少ない。

 というわけで雨の中、GWの残存部隊である2人のゲストとともに、キチンと2本潜ってきたのだった。

 ゲストといっても、お2人ともセルフダイビングなので、ありがたいことに僕たちはカメラを持って遊びで潜れる。
 そういうときこそ、各ポイントを隈なく周り、来たる次のゲストのために遺漏なく下調べをしてお………けばいいのだろうけど、あいにくそうはいかない。

 なにしろ今日なんて、一つの被写体の前で2〜30分粘るというのを繰り返したから、一本のダイビングにつき登場人物はせいぜい3人くらいなもの。
 ファンダイビングと水中写真は両立しないのである。

 そんな今日の登場人物たち。

 ご存知アジアコショウダイの幼魚。
 クネクネクネクネ動き回る幼魚のアクビを撮ろうだなんて、無謀も甚だしいものの、クネクネクネクネ泳ぎすぎるせいか、彼らはかなり頻繁にアクビをしてくれるので、奇跡的にピントが合うこともあるのだった。

 キンセンイシモチの口内保育。
 この季節、卵を口の中で守っているテンジクダイの姿をあちこちで目にするけれど、その口の中の卵を観る機会はそれほどない。
 というか、観ようとしなければ目にすることはできない。
 目にするためにはどうするかというと、ひたすら待つ。
 口の中の卵に酸素に富んだ新鮮な水を送る必要があるため、彼らはときおり口をフガフガして、チャーハンを炒めているフライパンのように卵を動かす。
 その時がチャンス。
 ただ、必ずこちら側を向いてそれをやってくれるとは限らない。
 待って待って向こうむきでそれをやられた日にはもう……。
 でもさらに待っていたら、こっちを向いてやってくれた。

 ホシゴンベのチビちゃん。
 この数ヶ月の間ずっとほぼ同じ場所にいる子。
 近くにある紫色のトゲサンゴに乗っていることもあって、絵的にはそちらのほうが美しいのだけれど、残念ながら今日はこのハナヤサイサンゴの上だった。
 水温が低かった間は、ストロボが一度光るたびに場所を移していた彼も、そろそろ24度の声が聞こえ始めるようになり、ピカッと光るくらいではその場を逃げなくなってくれた。

 ハナミノカサゴの超チビちゃん。
 3センチくらいの小ささ!!あまりの可愛さに思わず手で包み込んでしまおうかと思ったけど、彼らにもやはり毒はある。
 これはしばらく常駐していると思うので、そういう意味では「下見」になっているか??

 図鑑で見るかぎりでは、まだ名前がつけられていないベニハゼの仲間。
 暗く狭い岩陰にこちら向きで佇んでいることが多いので、横から眺めるチャンスは少ない。
 こういうハゼって、餌が漂ってくるとそれをゲットするためピュッとその場を離れ、ファインダーの視野から一瞬にしていなくなるのだけれど、面白ことにほぼまったく同じ場所にサッと戻ってくる。

 とまぁ、こんな調子で大雨の下の暗い海中で遊んでいたのでした。