「徒然海月日記」から海の話が含まれている日記のみ抜粋したバックナンバーです

2010年 6月7日(月) 雨晴れ雨晴れ曇り

北東の風 波あり 水温25度

 梅雨空が続くので、仕方なく霧雨降る中海へ。

 よく行く場所に、このところずっと同じところでカイメンを食べている大きなミアミラウミウシがいる。
 ゲストを案内中に、ああ撮りたいなぁ…と指をくわえることしばしば。そういう時にかぎって、なんとも撮りやすい場所にいたりする。

 で、こういう場合はおうおうにして、自分がカメラを持っていざ赴いてみると、跡形もなく姿を消している……ということになる。

 ところが今日は、珍しくちゃんといてくれた。
 それも、2匹も!

 すでにカイメンはあらかた食べつくされ、カイメン上にはこのミアミラウミウシのモノであろうと思われる卵まで産み付けられていたので、おそらく彼らがここにいるのは最終盤だったかもしれない。

 あまりいい位置にはいてくれなかったし、大きいので「2匹いる」という写真を撮れなかったものの、とりあえず証拠写真をば。

 かなり奇抜なカラーリング。
 ちなみに、裏はこうなっている(別の個体)。

 エントリー後早々に目的を果たせたのだった。

 雨が続いているわりには水は心地良く透明で、水温ももはや冬の名残りは残っていない。
 心地いいので、中層で泳いでいるグルクンを眺めつつ、目的もなしにフラフラ泳いでいると、うちの奥さんがなにやら呼んでいる。

 これだった。

 コミドリリュウグウウミウシ。
 砂地をアテもなく一人で這い回っている姿をたまに見かけることがあるこのウミウシは、周りの砂粒と比較しすればおわかりいただけるとおりとても小さい。
 こんな広い海底で、こんな小さなウミウシが、めでたく伴侶と出会うことなんてあるんだろうか……とおぼろげに思っていたのだが、ちゃ〜んとめでたく出会っているという事実を今日初めて知った。
 体の横から交接器が出ているの、わかります?<肉眼ではわからなかった……。<齢です(涙)。
 それにしても、どこで卵を産むんだろう??

 コミドリリュウグウウミウシがめでたく出会いを果たしていた海底には、こういう連中もいた。

 ご存知ゴンズイ玉。
 この時期に観られるゴンズイ玉は、構成員たちがとても小さいので、まるでタタリ神のような動きをする玉を観ているだけで楽しくなる。

 小さいといえば、この時期そこらじゅうに溢れている幼魚たちも小さい。
 ここまで小さいと、何の幼魚なのかさえわからなくなりそうだ。
 これ、何の幼魚だかわかります?

 答えはナミスズメダイ。<あってますよね?

 シーズン中には何度も産卵しているはずなのに、どういうわけかこれら幼魚が目立つのは今の時期。夏場になると魚が増えて、捕食圧が高まるせいで、幼魚たちが生き残る率が減ってしまうからだろうか。

 そういう意味では、今は貴重なシーズンなのだ。
 ああ、この前見かけた5ミリほどのクロスズメダイの幼魚も撮りたかったなぁ…。

 ところで。
 シーズン前のうちに伝えよう伝えようと思っていてずっとこれまで忘れていた大事な話を思い出した。
 宅配便やゆうパックの話。
 最近やたらとセキュリティ関係で目くじらを立てるようになっているのだ。

 それもこれも、各航空会社の貨物に関するセキュリティで、世情とかく騒がれるテロに対する安全策として、貨物として受け付けられない物品がやたらと増えているためである。

 ダイビングの旅行をする方にとっても、無縁の話ではなくなっている。
 ダイビング器材をあらかじめ滞在先に送る場合、荷物の内容はたいてい「ダイビング器材」と書く。
 すると、宅配業者ならびに航空貨物業者は慌てふためくらしい。

 「空気が充填されたタンクが入っているかも!!」

 ……ってあんた、ダイビング黎明期ならともかく、ダイビングがこんだけ一般的なレジャーになった今日にあって、タンク自体を宅配便でわざわざ送ろうとするダイバーが世の中にどれほどいるというのだ。
 しかし「セキュリティ」という大義名分の前には、そんな常識は微塵も通用しない。
 なかにはそれがために「船便」にまわされ、旅先へのご自身の到着に荷物が間に合わなかった、ということも各地で起こっているらしい。

 テロを企てるヤツがわざわざ「ダイビング器材」って書くか?
 というか、すでに航空業界がそういうセキュリティ体制であると知れば、本気でテロを考えているヤツはまったく違う手を考えると思うのだが。
 つまりは、このセキュリティシステムは、テロ防止という大目的はお題目だけで、単に各航空会社の責任逃れでしかないわけだ。

 気をつけなければならないのはダイビング器材だけではない。
 「カメラ」も要注意なのだ。
 いったいカメラの何がダメなのかと不思議でしょうがなかったのだが、先日ハウジングをゆうパックで送ろうとした際に判明した。

 今の航空業界では、リチウム電池が「危険物」になっているのだ。
 その理由はわからなくもないけれど、リチウム電池のせいでカメラや時計をはじめとする小さな物品を、航空便で送れなくなっているのである。

 まぁ一般的にダイバーの皆さんの場合は、ハウジングを送ることはあってもカメラ本体は手荷物、ということが多い。しかし宅配業者も航空業者も、荷物に「カメラハウジング」とか「カメラ器材」と書かれてあるのを見ただけで、「すわ一大事!!」とばかりに右往左往するらしい。

 だったらだったで、宅配業者も送付状の「荷物」の欄をもう少し拡充して、以下のものが含まれていますか、くらいの項目を作ればいいじゃないか。内容物を詳しく、といわれたって、まさかリチウム電池の有無までは書かんでしょう。

 世の中はハイテクが進んでどんどんどんどんスタートレック的世界になっていくというのに、そのせいでこれまで普通だったものがどんどん不便になっていくというのはどういうことよ。

 とにかくみんさん、器材その他を宅配で送られる際には、くれぐれも「タンクなし」「リチウム電池なし」と記入することをお忘れなく。