「徒然海月日記」から海の話が含まれている日記のみ抜粋したバックナンバーです

2010年 6月22日(火) 晴れ

南の風 波あり 水温26度

 普段よく行くポイントでも、あまり行かない深い場所となると、それなりにワンダーランドになる。

 たとえばこのウミエラの林。

 アキアナゴの群落が尽きるあたりから、またまたガーデンイールの群落か??と思ったら、それが全部ウミエラ。
 ウミエラは海草のように見えるけれどれっきとした動物で、大きな範囲ではサンゴやイソギンチャクと同じ仲間になる。

 水納島で通常潜る水深では、このウミエラは小さいものがポツポツ見られるに過ぎないのだが、5気圧くらいの世界では、このように20〜30センチくらいのものが林のようにニョキニョキ立っているのだ。

 タイミングによってはその「エラ」の部分が閉じていることがあり、まるで死んでしまっているかのように見えるのだけど、後日潜るとみんな元気に「エラ」を広げている。

 この一本一本をよく観れば、ウミタケハゼや各種エビ、カニダマシなどがついていることもある。

 そんなウミエラ林の中に、どういうわけかひときわ長いものがポツポツ観られた。
 こんなに長いのだ。

 長いでしょ。
 これがムチカラマツとかじゃなくてウミエラ類なんだからビックリした。ウミタケハゼかガラスハゼか、小さなハゼも数匹住んでいた。

 その他、スナイソギンチャクやら得体の知れないヤギ類やら、そしてけっこう大きなトサカが、なんの前触れもなく砂地からニョキッと出ていたり。

 そういえば数年前のこのあたりはウミエラの林ではなく、これらトサカ類の林だったこともある。
 わりと大きく育っていたのでその後に期待していたのに、何かが原因でトサカ類は死に絶え、それに代わってウミエラの林になっているのだ。
 次はいったい何の林になるのだろう??

 これら刺胞動物系だけでもワンダーランドなのに、それぞれにまた魅惑的な小動物が住み着いている。
 こういうところに長居したい!!

 ……が、あまりに深いため、滞在時間はほんの少々にせざるを得ないのだった。

 さてさて、お気づきのようにカメラのレンズをフィッシュアイに換えている。
 その目的は、サンゴたちの成長ぶりをみなさんにご覧いただくことにある。

 まずは将来に期待が持てるミニ一本サンゴ。

 これが昨年7月末の姿。
 それが今年は………

 少々角度は違うけど、サンゴ自体がすっかり成長しているの、お分かりいただけますか??

 ミニ一本サンゴから「ミニ」が取れる日も近い。
 (実はここ、本当は二本サンゴなんですけどね。)

 リーフの上のサンゴたちも随分成長している。
 これが昨年7月末。

 そして今年は……

 カメラとサンゴの距離や角度が多少異なるけど、ほぼ同じ場所から見た姿。注目すべきはテーブルサンゴの形状と、サンゴ同士の距離の差。かなり縮まっている。
 随分成長しているでしょう??

 人工的な移植で増えたサンゴを観て喜ぶなんてのは、相変わらず保育所の数がまったく足りないのに、子供手当てを貰って喜んでいるようなものだ。まやかしに目を奪われていてはいけない。
 環境さえ整っていれば、いちいち人間が移植などせずとも、サンゴは勝手にスクスクと育っていくのである。
 大事なのはまやかしのサンゴ礁ではない。守るべきは、サンゴを育むことができる環境にこそある。

 では環境を守るにはどうしたらいいのか。
 何もしなければいいのだ。
 あらゆる人が何も手をつけなければ、自然は文字どおり自然のままでいてくれる。

 とはいえ、その「自然」を生業の職場にしている身としては、いささかなりともそのフォローをしなければならない。
 だからこそ、こうしてその素晴らしさを皆様に伝えているわけである。
 アカジンの刺し身が美味い、サザエがたくさん採れた、タコのカルパッチョがたまらなく美味い、なんていうのも、これすべて「自然の素晴らしさを伝えるため」であるのはいうまでもない。ハッハッハ。