「徒然海月日記」から海の話が含まれている日記のみ抜粋したバックナンバーです

2010年 10月6日(水) 晴れ

北の風 うねりあり 水温27度

 放射冷却のせいか、朝方はタオルケット一枚じゃ寒くて仕方がなかった。
 秋分の日が過ぎて日が短くなり、太陽のパワーがすっかり落ちてしまった。ほんの少し冬の肌寒さを恋しく思っていた真夏の日々が懐かしい。やっぱり一日中Tシャツ短パンで過ごしていられるほうがいいものね。

 そうはいってもまだ10月。
 さすがに日が昇ると暑いくらいで、海へ行こう!という気になる。
 というわけで、今日も朝から潜ってきた。

 その昔はカーペンターズラスと呼ばれていたクジャクベラは、水納島ではけっこう深いガレ場でチラホラ見られる程度だった。

 ところが今年になって、同じガレ場はガレ場でもそれほど深くはない海底付近で観られるようになっていた。以前は気づいていなかっただけか??

 カメラ派ダイバー全盛の今でも、泳いでいる魚を写真に撮ろうという人はそれほど多くはない。ましてやベラ類となると、カメラを向けようという人すらおらず、自然、じっくり観察しようという人も少ない。

 だから、せっかくわりと浅いところで観られるようになったというのに、このクジャクベラをご案内することはあまりない。
 たとえご案内したとしても、普段はこういう姿をしている。

 ストロボが当たっているから赤い色が出ているものの、海中の自然光で観るとまったく目立たない。しかもこの姿形だとそこいらの普通のベラ類と大して変わらない。
 が。
 このクジャクベラは、ヒレを広げて初めてその真価を発揮する。

 カッコイイ〜〜〜〜ッ!!
 この戦闘的なまでのシャープさ。無駄を一切排した洗練されたフォルム。それでいて、ネオジオンの新型モビルスーツのような気品ある羽飾り。
 まさに非の打ちどころがない。

 なのでこのクジャクベラをご案内するときは、スレートに「ヒレを広げた姿がカッコイイです」と書く。でも彼らは年がら年中のべつまくなしにヒレを広げ続けているわけではないから、ご覧いただくためにはいささか根気を必要とする。そのうえその姿を撮るとなると、タンク一本費やす覚悟が必要だ。

 とはいえ、水深35m以深で粘らなければならなかった以前までとは違い、普通の水深で泳いでくれているので、写真を撮るチャンスがグーンと増えた。
 だから毎回ゲストを案内するたびに、次マクロレンズを持って遊びに来るときは撮りに来よう…と思い続けていたのだけれど……

 ………今日やっと思い出したのだった。
 ちなみに上の写真でヒレを広げている姿は、普通に広げているケース。
 これがメスに対してアピールする時になると、色まで変わってくる。

 尾びれのラインの色まで変えてしまうなんて、なんだか高性能光学迷彩スーツのようでカッコイイ。
 水中なので赤みは消失するものの、メスにアピールする時の泳ぎ方ともあいまって、こんな姿を目の当たりにしたら体中シビレまくりますぜ。<窒素酔いか??

 そんなこんなで、今日は結局このクジャクベラでタンク一本使ってしまったのだった。