「徒然海月日記」から海の話が含まれている日記のみ抜粋したバックナンバーです

番外編
続・台風日記

2011年 6月3日(金) 朝雨のち曇りのち晴れ時々曇り

南西の風 おだやか 水温23〜24度 

 前日の時系列天気予報では、那覇も名護も24時間傘マーク以外ないという絶望的な予報だった。
 そんな予報どおり、朝は、海へ行こう!というモチベーションが消滅する大雨。
 ところがそろそろ海に行く準備をせねば……という時間から、お天気は徐々に徐々に回復してくれた。

 梅雨明けかな?

 そして連絡船が島に到着する頃には、すっかりいい感じのお天気になりつつあったのだけど、島を訪れている日帰り客といえば、MMCが連れてきていたお客さん一組二人だけ。
 午後には日差しにも恵まれて、夏を思わせる南風がそよ吹く心地良いビーチに、パラソルがポツンとひとつ立っているのであった。

 6月になってもこの閑古鳥、みなさん大丈夫なんでしょうか??

 …と他人の心配をしている場合ではなかった。
 ダイビングのほうはおかげさまでゲストにお越しいただいているものの、雑貨屋さんなんて、島にお客さんが来ないんだもの、開ける意味がない。
 ただ、今たとえお客さんがやってきたとしても、その冬枯れの景色には戸惑われるばかりだろうなぁ。

 だって、こんなふうになってるんですぜ、今。


こうしてみると、さすがにフクギは台風に強いことがよくわかる

 初冬の軽井沢ですか?<行ったことないけど。
 台風で木々の葉が枯れて落ちるということはこれまでもたびたびあったとはいえ、ここまで徹底的に枯れつくした姿は見たことがない。

 ローズマリーも前半分がやられてしまった。

 そして、O野さんがご自身のブログで紹介してくださっているランタナも……

 これからお茶になるんですか?なみの枯れ具合。
 こんな姿を目にした日帰り客のみなさんが、すぐさま「台風のせいなのね…」とピンときてくれればいいんだけど、先だっての台風と今時分が見ている光景とをパパパと結びつけて洞察できる人なんて、今の日本人にどれくらいいるんだろうか。

 単に枯れ果てたところ…と思われるのが関の山のような……。

 しかしこの日のダイビングでは、そんな植物の枯れ具合どころではない衝撃が待っていたのだった。

 台風後に初めて、西側の岩場のポイントに行った。
 南東〜南風が猛烈だったから灯台付近のリーフはひどかったけど、西側はきっと大丈夫だろう。

 と思いきや。
 エントリー早々から、サンゴがバキバキ折れていた。さすがに舞い飛ぶサンゴ礫はこちらも同様だったようで、石が飛び散ったためにサンゴの枝が粉砕されている。

 しかしそれどころではなかった。
 あのキノコ岩が!!
 ハマサンゴというサンゴが形作った、キノコのような形をした、6畳ほどの大きな巨岩がある。
 その傘の下ではときどきアカウミガメやネムリブカが休憩していたり、各種魚たちが隠れ家にしている。
 このポイントに来たらたいてい立ち寄るので、ご存知の方も多いだろう。

 そのキノコ岩が!!

 完全に崩壊していた!!

 我が眼を疑うとはこのことだ。
 水深18mほどですぜ。
 しかも、長い年月数々の台風に耐え続けてきた大きなサンゴ岩ですぜ。

 それがものの見事に、分断されてひしゃげて崩れ落ちているではないか。

 いやあ、ビックリ。

 たしかに、いつもの台風後にくらべ、海底の漂白されている部分(波に洗われた部分)が、かなり深い場所までずーっと続いているなぁとは思っていたけど、まさかこの岩を壊すとは……。

 また、キノコ岩ほど大きくはないものの、さらに深いところ、水深23mほどの海底にある、奇妙な形をしたオオハナサンゴというサンゴがある。
 五右衛門風呂ほどのそのサンゴ群体、図鑑によると、オオハナサンゴという種類がそらくらいに大きな群体を作るのは珍しいとされているんだけど、それよりも海底にポツンと生えているそのオブジェは、なんだかついつい手を合わせて拝みたくなるような存在感がある。

 我々はそのサンゴをヘッポコサンゴと呼んでいた。
 そのヘッポコサンゴが………

 倒壊!!

 水深23mですぜ。
 オオハナサンゴがこれくらい大きな群体になるまで、どれくらいの年月がかかったのかは知らないけれど、少なくとも10年20年って話じゃないですぜ。

 その間にも数々の台風に襲われたのは間違いないのに、ずーっとずーっと絶えてきたこのヘッポコサンゴが、ついに倒壊。

 どんだけすごかったんだよ、台風2号!!

 あれほどの暴風を生き延びたことを奇跡と思って寿いだ我が家だったものの、この海底の惨状を見るかぎり、なんだかもう、今シーズンの台風をすべて無事に乗り切る自信がまったく無くなってしまいました……。


在りし日のキノコ岩
(いえ、人じゃなくって岩のほうですから)