「徒然海月日記」から海の話が含まれている日記のみ抜粋したバックナンバーです

2011年 6月5日(日) 晴れ

南西の風 島の南側は波高し  

 梅雨明けの宣言はまだないけれど、どう考えても夏至南風でしょうという風が吹く、夏のようなお天気だった。

 ただ、ひとつだけ違和感が。
 蝉の声がひとつもない。

 例年だったら、一足早くフライングしてしまった子が、すでにチラリホラリとその声を聴かせているものなのだけど、今年はここに至るまでまだ一度も蝉(リュウキュウクマゼミ)の声を聴かない。

 今年はよーいドン!で一斉に鳴き始めるのだろうか。

 海の中もようやく春の終わりってところで、まだまだ労せずしてウミウシに出会える。
 たしかに春は一年の中でもウミウシに出会える機会が多い季節ではある。とはいえ今年ほどボコボコ出会えた年が他にあったろうか。
 ホント、湧き出てくるかのように、毎日のように「初めて」観るウミウシたちに出会えるくらいだ。

 今まで何してたんだよって話なのかもしれないものの、でも今年だって、特にこれといってウミウシ探索のためにいつもと違う潜り方をしているわけでもなんでもない。
 それでも次から次へとボコボコ出てくるんだもの。

 最近海中で最も色めきたったのはこのウミウシだ。

 シアワセの青いウミウシ!!

 青いウミウシなんて観たことない。これは誰も知らない新種に違いない。さっそく世界のM下さんに訊かなきゃ!!

 …と思ったら。
 しっかり図鑑に載っていたのだった。
 その名をアオクシエラウミウシというそうな。

 砂地のポイントの水深十数メートルの海底付近を、特有のエビ反りポーズをとりながら漂っていた。
 この場合、5ミリほどの漂う物体をウミウシと見極められるかどうかが勝負の分かれ目になるわけで、このときの僕はその勝負に勝った。ハッハッハ。

 ただし漂っていたのはたまたまだろう。
 やはりこの子も本来は浅所の礫の下にいるのがフツーらしい。
 台風2号が遣わしたウミウシなのである。

 浅所のサンゴ礫下にいるはずのウミコチョウ系も、その台風2号で吹き飛ばされたおかげで、ここしばらくはフツーに潜っていても出会えるようになっている。

 このキイロウミコチョウも、そのおかげで初めて出会えた。

 ウミコチョウではないけれど、このモウサンウミウシも、おそらく台風で住処を追われたクチだと思う。

 いずれも僕自身にとっては初めてのこれらウミウシたち。
 すべて、2日間のうちにテキトーに潜っている時に出会えてしまった。

 梅雨も明けそうだし、小魚も増えてきたし、太陽の輝きに力強さが備わってきたから、そろそろレンズをワイドに代えようかなぁと思いつつ、潜るたびにまだまだ新たな出会いが待っていそうな気がして、なかなかマクロレンズを手放せない今日この頃なのだった。