「徒然海月日記」から海の話が含まれている日記のみ抜粋したバックナンバーです

2011年 7月3日(日) 晴れ

南西の風 少し波あり 水温26〜27度

 水温が上がってきたからか、今年もアオウミガメ遭遇率が高い。
 そして、昨年からお伝えしているように、以前では考えられないくらいにフレンドリーになっている。

 従来水納島で遭遇するアオウミガメといえば、一部の例外を除き、たいていの場合「いた!」と思った時にはすでに遊泳態勢になっていて、排気音をブゴゴボゴと出そうものなら、カメのくせに脱兎のごとく泳ぎ去っていたものだ。

 ところが近年出会うアオウミガメたちは、ナリは小さいものの愛嬌タップリで、ダイバーを恐れるということない、といっても過言ではないほどにフレンドリーな子もいる。

 それが1匹だけではなく、徐々に徐々に、そのフレンドリーさが広がっているような気がするのだ。

 そんな話を書いていたら、昨年某海洋写真家から情報が届いた。
 どうやらカメたちは、「安全情報」みたいなものを、カメネットで交換し合っているらしい。
 だから1匹のカメ君が

 「ダイバーって危険な存在じゃないんだ」

 って理解すると、少しずつその周辺にいるカメ仲間に情報が伝わり、伝播していくにつれてフレンドリーなカメ君たちが増えていくのだという。

 ここで大事なのは、なにもカメがドンくさくて危険を察知しないわけでも、ダイバーが大好きでいつでもそばに近寄りたいと思っているわけでもなんでもなく、カメ君たちにとって我々ダイバーが、危険でもなんでもない存在である、と認識しているだけに過ぎないということ。

 逆に言うと、「ダイバーは危険ではない」と思ってくれているカメの信頼を裏切ると、それもまたカメネットで伝播していくのだ。

 フレンドリーなカメに出会いたいのであれば、ゆめゆめカメ君たちの信頼を裏切ってはいけない。

 つまり。
 超フレンドリーで、どこまで顔を近づけてもびくともしないカメ君に会ったからといって、

 「触ってみようかなぁ♪」

 なんていう誘惑に駆られてはいけないのである。触れられて喜ぶカメなど一匹もいないのだから。
 むしろそれは彼らにとって「害」であり、「ダイバー=危険ではない」という彼らの認識を、大きく覆す行為にほかならない、ということを、彼らの生活空間にお邪魔させてもらっている我々ダイバーは、深く認識しなければならないのであった。