「徒然海月日記」から海の話が含まれている日記のみ抜粋したバックナンバーです

2011年 7月6日(水) 晴れ夕方少し雨

南西の風 風上側は波あり 水温27度

 この時期になると、海中のそこかしこで、いろんな魚が恋を謳歌している。

 普段に比べ、やけに活発にブダイたちが泳いでいるなぁと思ったら、あっちでバシュッ、こっちでブシュッとアクティブな産卵をするし、地味なハギたちがやたらと集合しているなぁと思ったら、まるで打ち上げ花火のような豪快な集団産卵ショーが始まったりする。

 その点クマノミをはじめとするスズメダイたちは、海中に卵を散布するのではなく、卵をキチンと岩肌などに産みつけてから、孵化するまで親、もっぱら父親が卵のケアをする。

 なかでも血気盛んなのが、ミツボシクロスズメダイだ。
 小さい頃はその名の由来である白い点々が愛らしく、当店の
Tシャツデザインのモチーフにもなっているくらいなのだけど、大人になると、それも恋の季節になると、とてつもなく暴力的になる魚として有名だ。

 彼らはなんの変哲もない岩肌に卵を産みつける。
 そこに訪れるダイバーは、無論そんな卵に惹かれて来ているわけでもなんでもなく、ただただ通り過ぎようとしているだけ。
 にもかかわらず、その卵を守っている父ちゃんミツボシは、

 巨大な敵現るッ!!

 とばかりに猛然と攻撃を開始する。


写真右下に卵があります

 どうです、この顔。
 自分よりも何百倍も大きな「敵」を相手に、果敢に撃退しようとする彼らの真剣なマナザシ。

 撃退するためには手段を選ばないので、手当たり次第に噛み付いてくるし、時にはダイバーの髪の毛をくわえて引っ張ったりもする。鳥羽のタコ主任は、そのせいで髪の毛が少なくなってしまったくらいだ。

 さして美しくもないくすんだ色の魚に攻撃されると、彼らがそこで卵を守っているという事実を知らない多くのダイバーは、怒りを漲らせて追い払おうとする。
 しかしそれは、紛れもない逆恨みなのだ。

 我々ダイバーは、、彼らの世界にお邪魔させていただいている存在だということを忘れてはならない。