2011年 7月17日(日) 晴れ!
北東の風 荒れ模様
お天気も良く、たいして風も吹かず、いたってのどかな台風休み。 晴れているのに島に観光客が誰もいないという光景は、冬ならともかくこの季節にはなかなか違和感がある。 一方、暴風域に入る見込みが高かった大東島では、来たる暴風に備えて島民たちが粛々と暴風対策をしている様子が、テレビニュースで報道されていた。 一昔前なら大東島のほぼリアルタイム映像なんて考えられなかったから、台風前の対策の様子が今さらながら面白かった。 暴風に曝される軒先に大きな生コン車を停め、生コン車と屋根をチェーンで接続。こうすることによって屋根が飛ぶのを防ぐ一方で、家の窓ガラスに当たる風を避けるという寸法らしい。 なるほど………。 アネックスの入り口にも、大きなダンプ一台停められれば、風当たりはかなり変わるのだがなぁ………… ……って、水納島にそんなものないし。 さてさて、幸いにして台風6号が沖縄本島の遥か東で進路を北にとってくれたおかげで、のどかなのどかな時間が流れている。 そういうときにしかできないことを、しなければならない。 Let’s Dive! 〜海の中へ〜うみまーる流海にやさしい水中写真術 うみまーる 刊 1200円 もうすでに多くの方がご購入、もしくは書店で眺められたことだろうからご存知だろうけど、なんとなんと、大き目のポストカードサイズに収められたこの作品集は、すべてコンデジで撮影されたものなのだ。 フィルム撮影にこだわっているはずのうみまーるが、なんでまたコンデジで?? それはこの作品集が、今や猫も杓子も「カメラ派」になったダイバーたちへの啓蒙書だからだ。 デジカメが普及して以来、カメラを手にダイビングをする人は飛躍的に増えたのは周知のとおりで、最近ではカメラメーカーがあらかじめ専用の安価な水中用パックを用意していることも当たり前になった。 そのおかげで、一昔前なら水中写真といえば、線路脇で三脚を並べてたたずむ撮り鉄なみにマニアックな世界だったものが、今ではダイバーたちのほとんどが、カメラを片手にパシャパシャパシャパシャ、林家ペー&パーも真っ青になるくらいに撮りまくるようになっている。 なかには1本のダイビングで百数十枚も撮る方もいるほどで、60分潜っていて120枚ってことは、30秒に1回シャッターを押していることになる(算数合ってますよね?)。 シャッターを押すためにはたいていの場合液晶画面を見なければならないから、つまるところその方が1本のダイビングで見ている海中シーンは、ほとんどが液晶画面ということになるわけだ。 まぁご本人が満足なら、それはそれでひとつのダイビングスタイルね、と笑っていられる。 が、最も困るのが、液晶画面以外にまったく目も心配りも届かなくなり、1枚の写真を自分のものにするために、他のダイバーを含めた周辺環境に多大なる被害をもたらしている「カメラ派ダイバー」だ。 あなたがサンゴを折り、イソバナを砕き、砂を巻き上げ魚たちを恐怖に陥れながらその1枚の写真を撮ることで、いったい世の中の誰がシアワセになるというのだ。 と、気が向けばアカジンなどを獲ってしまう自分のことは棚に上げつつ、僕などは即刻コンデジカメラ派ダイバー根絶運動のために隕石落とし作戦を開始したいところ。 エコだなんだといいながら、放射能まみれの水を海に垂れ流し続けても平気な日本人に、その彼らの思いがいったいどれほど伝わるのだろうか。 「この温かさを持った人間が地球さえ破壊するんだ。それをわかるんだよ、うみまーる!」 と彼らに教えてあげたいところなのだが、それでも彼らはきっとこう言うだろう。 「わかってるよ。だから、世界に人の心の光を見せなけりゃならないんだろ」 さあみなさん、未見の方はすぐさま本書を手にとり、彼らうみまーるが織り成す人の心の光を、とくとご覧あれ! えー、個人的には、アオウミガメが水面で顔を出して息継ぎしている写真が好きです。この鼻ちょうちんって、狙って撮ったんでしょうか??偶然??(鼻ちょうちんですよね、これ?) てゆーか、水面で息継ぎするカメの写真って、中性浮力関係ないやん……。 ちなみに、誤解のないように申し述べておくけれど、「水中写真術」と副題にありはするものの、とてもコンデジで撮ったとは思えない綺羅星のごとき珠玉の作品の数々には、いちいちテクニカルな解説はついていない。 というあたりでやや不安なのは、このコンデジ作品集を見て、 「コンデジでもこんなに撮れるのか!!」 ということにのみ目を向ける方がいはしまいかということ。 だから今のうちに言っておこう。 無理 ですから。 まさか、パシャって適当に1枚撮ったら雨滴がバッチリ写っていた……なんて思ってないですよね?? 彼らうみまーるは、一枚一枚の作品に要した時間や苦労などをいちいちこれ見よがしに述べたりしないから、パラパラ…と作品集を観ている読者は 「ああそうかぁ……海に溶け込む気持ちでいれば、こんなに撮れるんだぁ……」 なんて思うかもしれない。 海の心地良さを感じる心と、それを大切に思う気持ちと、そして「作品」を撮ろうという思いが合わさって、初めて人に見せ得る気持ちいい1枚の写真を生み出すことができるのだ。 この最後の「作品を撮ろうという思い」が、なかなか我々一般ダイバーにはとうていたどり着けない「プロフェッショナル」な部分なのである。 我々には、海の心地良さを感じる心と、それを大切に思う気持ちがあればいい。 あと蛇足ながら、中性浮力による撮影における注意事項をいくつか。 砂地の根で撮影する場合でも、そりゃもちろん中性浮力で撮るに越したことはない。ただしだからといって、根の真上にデデンッと陣取る形で浮かんでしまったら、せっかく食事のために根の上流側で群れ泳いでいる魚たちが、一斉に根に降りてきてしまう。 ダイバーが根の真上に陣取ってしまうことで、魚たちの群れ集う姿は、あるがままの姿ではなくなってしまうのだ。 また、中性浮力を維持しようと努力するダイバーのなかには、あくまでも「浮いている」状態をキープするためにかえってジタバタしすぎて、せっかく落ち着いた状態になっている環境を、砂を巻き上げたり魚を追い散らしたり、いろんなものを蹴ったりして、余計に害をもたらしてしまっている人もけっこういる。 中性浮力で写真を撮るのを目指すのは素晴らしいことだけれど、その練習を「現場」でやるのはお止めになって……と切に願うのであった。 |