「徒然海月日記」から海の話が含まれている日記のみ抜粋したバックナンバーです

2011年 10月10日(月) 雨

北東の風 おだやかのちかなり荒れのちおだやか少し波あり 水温25〜26度

 この日朝の海は、この3連休で一番の穏やかさを湛えていた。
 朝イチの便で島を去るTさんは、よりによって帰る日が一番いい海だなんて、と嘆いておられた。

 が。
 昨年は台風のために、到着後潜ってすぐさま島を出る羽目になり、先月は台風で予定そのものを吹き飛ばされたTさんである。
 3連休のぐずついたお天気とやや荒れた海況は、すべて彼のせいであることは明らかだった。

 と、去り際の彼をみんなでいじめていたところ、

 「いや、今日このあと風は吹き雨は降り、海は荒れ放題になりますよ、きっと!」

 バッドコンディションが自分のせいではないことを力説するTさんなのだが、微笑を湛えているかのようにキラキラと輝く穏やかな海を前にしては、ムナシイ叫びでしかなかった………

 ……はずだったのだが。
 悪天候の元凶も去ったことだし、さぁ1本目に行きますか!という頃に、にわかに風が吹き始めた。それも、天気予報どおりの南東の風ではなく、北東から。

 雨雲の下の一時的な強風かと思いきや、たしかに雨雲由来の風ではあるものの、結局2本目を終えて船に戻る頃までずーっと海は荒れたままになってしまった。

 恐るべし、Tさんの怨念………。

 それでも強風が局地的なだけあって、海中深くまでうねりが達するような荒れ方ではなく、海の中は流れが少々強かったもののいたって心地良かった。

 心地良かったので、普段はスルーすることが多いこういうモノと対面してみた。

 ご存知クロエリオオメワラスボ。
 ハゼの仲間であるとか、実はハゼではないとかいろいろあったけど、そもそも名前に「ハゼ」とついていないのでそのあたりのことはどうでもいい。

 彼らは砂地の底から10センチほど上でホバリングしていて、流れてくる餌をときおりパクついている。
 ただし、じっくり観ようと近づくと、まるでスルドイ針が突き刺さるかのごとく、砂地にプスッと潜りこんでしまう(そこに専用の穴がある)。

 ところが今日出会ったこの子は、流れが強くて餌が次々にやってくることに気をよくしているのか、いつになくフレンドリー。なんだか心地良さそうだ。
 すると……

 アクビした。
 やはり心地いいらしい。

 それにしても、意外に口裂け女的大口だったのね、ワラスボちゃんって………。