其之十六
「寄生獣」という漫画をご存知だろうか。
人間に寄生する地球外生命体と人間との対決を描いた、青春パニックホラーアクション人情巨編である(それこそなんじゃそりゃ?)。
で、主人公の相棒役として登場するのが、ミギーという愛称の寄生獣。
本来は宿主の脳に入り込んで宿主を乗っ取るという寄生方法をとるはずだったのが、幸か不幸か主人公の右手だけに留められてしまった。そのため主人公と主人公の右手はそれぞれ別の人格を有し、ついにはよき相棒となる。
右手は人格だけではなく、形状までミギーの意思ひとつでいくらでも動作したり変形することができ、ときには地球外生命体っぽい形になったりする。
冒頭の写真は、まさにそのミギーの眼!
ところで、写真の眼の持ち主はいったい誰?
実はこれ、お土産屋さんなどでも有名な、スイジガイの眼である。
そう、貝の眼なのだ。
目のように見えるもの、ではなくて、感覚器官として正真正銘の眼。
眼は1対あって、目を出しているときのスイジガイを前から観るとこうなっている。
貝殻にはちゃんと眼の通り道があり、眼は出し入れ自在だから、危険を感じるとシュッと引っ込めてしまう。
逆に目一杯眼を出すと、↓こんな感じになる。
もっとも、すべての貝がこのような眼を有しているわけではなく、「ミギーの眼」はもっぱらソデボラ科の仲間に限られる。
なので、同じソデボラ科のゴホウラにも…
↑この眼がちゃんと1対ある。
マガキガイの仲間(ソデボラ科)にも…
クリクリお目目が2つ。
貝に眼があるなんて普段意識しないから、ひとたびこれを眼だと知ると、貝に抱いていたキャラクターが激変する。
目は口ほどにものを言う、というけれど、たしかにこんな眼で見つめられると、貝の「意思」を感じないわけにはいかない。
水納島ではティラジャーと呼ばれるマガキガイなんて、美味しいから我々はもちろん島の人たちはみんな海を歩いて拾い集めるんだけれど、人々の手が伸びてくるとき、きっとこの眼で悲しそうな表情を作っているに違いない……。
そんな眼で見つめられても、あなたはティラジャーを獲ることができるか?
きっとできるにちがいない。だってとっても美味しいんだもの………。