其之二十
水納島の周囲に広がる白い砂底には様々な生き物が息づいている。
そんな砂地には、意外に多くの穴が開いている。
チンアナゴの穴しかり、ハゼ&エビの巣穴しかり、トゲアナエビの美しくもまっすぐなタテ穴しかり……。
これらの穴は、最初は「?」と思っても、潜っているうちにその正体が明らかになってくる。
ところが、中にはどれだけ潜っても謎のままの穴がある。
それが冒頭の写真の穴だ。
直径2cmくらいの穴が5~10個ほどひとところに集まっているのだけど、その配置には規則性はないらしい。
時にはそれが意味のある形のように、円を描くように配列されていることもある。
一方、この5~10個の穴セットが、いくつも集まっていることもある。
砂地のポイントで潜っていると、まず間違いなく目にすることができるからけっして珍しいものではない。
ところがこの穴の「主」が顔をのぞかせているのを観たことは一度もない(穴の直径に比して相当小さいハゼが出入りするのは観たことがあるけど)。
昔と違い、世の中にはありとあらゆる図鑑が出てはいても、それらは生き物自体の図鑑であって、それらの「巣」が系統的に載っている図鑑はまずない。
そのため、ひょっとすると「主」はありふれた生き物かもしれないとはいえ、穴はいまだになんじゃこりゃ?のままなのだった。
ご存知の方、テルアスプリーズ。