其之三十五
生き物好きな方は、ダイビングに慣れてくるとともに、いろいろなものをつぶさにチェックするようになる。
そして、それまでは一望ただの白い砂に見えていた砂底も、じっくり眺めてみれば様々な生き物がいる世界であることがわかるようになる。
なかには砂中に隠れ潜んで完全に隠蔽されている魚や甲殻類もいるから、ときに入念なチェックも必要だ。
そうやって砂底を眺めていると、ときどき奇妙な穴が開いていることがある。
丸い穴だと何かの巣穴であろうということが容易に想像できるけれど、冒頭の写真のような★形の穴となると、相当意表を突かれる。
いったいぜんたいなんじゃこりゃ!?
その疑問を解決するためには、砂中に潜む「ナニモノか」の姿を露わにしてしまうことになるかもしれない。
それがとんでもなく危険な生物であったり、正視に堪えないグロテスクなクリーチャーであったり、制御不能の巨大生物だったりしたらどうしよう?
シンジツの探求には、ときに勇気をも必要とされるのだ。
No guts, No glory。
疑問解決と真実究明のため、覚悟を決めて砂を掘ると…
それはナマコのケツメドなのだった(冒頭の写真のナマコではありません)。
魚たちが砂中に潜む場合は、目や口だけを外に出しているということが多いのに、ナマコはケツの穴だけを外に出しているらしい。
それにしても、こういう肛門の形なら、出てくるウンチはキューピーマヨネーズのようになっていそうなものなのに…
…と思ったら、この★形の内側に開閉自在の肛門があって、脱糞時はそれが丸い穴となり、ウンチは丸くなるようだ。
その開閉機構を利用して、ナマコの体内を隠れ家にし、出入り自在で外と中を行き来しているナマコマルガザミというカニもいる。
砂底をチェックするようになると、けっこう出会う砂底の星。
なにげに数多くのナマコたちが、砂中に隠れ潜んでいるのである。