其之十一
当サイトのこういうコーナーまでご覧になっておられる 変態的な 賢明なる 読者であれば、写真の生物なんてとっくの昔にご存知のことだろう。
でも、誰もが一度は必ず思ったに違いない。
「なんじゃこりゃ?」
と………。
かくいうワタシも、学生時代、ダイビングクラブに入部早々やたらと泳がされた米須(ジョン万ビーチ)のインリーフでその洗礼を受けた。
50mの間縄を水面に張り、それに沿って何度も何度も、時にはフィンをはずし、時にはマスクをはずし、とにかくひたすら泳いで往復しまくる。
当時は日曜日の真栄田岬だって、ときおり年配の夫婦が展望台から眺めを楽しんでいる程度だったので、風がどこから吹こうとも練習するポイントに事欠くことはなく、おそらくは現在よりももっと深かったと思われる米須のインリーフも重要な練習ポイントだった。
で、そこで泳いでいると(というか泳がされていると)、眼下で細長い生物がトグロを巻いているではないか。
ひょっとしてあれは……?
このまま泳いでいるうちに、いきなり襲われて還らぬ人となってしまうのではあるまいか。
傍らで我々1年生が泳いでいるのをワッチしている先輩方は、この重大な危機に気づいてくれているのだろうか??
まだ入部したててで、右も左も…どころか上下左右あらゆる方向がわからないことだらけだったワタシは、その名が細いものをすっかりウミヘビと思っていたのだ。
眼下にコイツを見ながら泳ぎ続けていた間、生きた心地がしなかったワタシ…。
その日、練習を終えて海からの帰る際に車中で先輩から聞かされた言葉は、今ではなかなか味わえなくなった生物学的衝撃だった。
「あれはナマコだよ」
え”???
あんな1mも2mもあるようなものがナマコ??
それが、オオイカリナマコを初めて知った記念すべき日だ。
オオイカリナマコも他のナマコ同様、砂に含まれている有機物やらなにやらをエサにしているため、砂ごと口にして砂はウンチで排出する。
その食事方法にはいろいろあれど、オオイカリナマコの場合は口の周りにある多数の触手を使う。
食事の様子は↓こちら。
気分よく食事している際に、その長い体のどこかにピトッと触れると、オオイカリナマコはたちまち↓こうなる。
危険と思って口を引っ込ませてみたものの、どうやら大丈夫そうだと知ると、オオイカリナマコは再び顔を出す。
紅顔の美少年はその後はからずもダイバーとしての履歴を重ね、↑こういったことや、普通に潜っている分にはウミヘビはナマコと同じくらい無害な存在であることを知ってゆく。
そして、増えていく知識に反比例して、昔味わったような「生物学的衝撃」はどんどん少なくなっていく……。
ゲストがコワゴワとこのナマコを指差し、すがるようなマナザシでワタシを見る姿を見ては、遠い夏の日々を思い出すのだった。