其之二十一
冒頭の写真、ウサギさんのようなヘンテコなモノも気になるところながら、その前に背後の黒いものは何か。
実はこれ、ナマコ(ニセクロナマコ)の表面。
一見何もいなさそうに見えるナマコの体表をつぶさに見ると、冒頭の写真のようなものがいることに気づく。
このウサギさんの顔のような、もしくは羽子板の羽のようなものは、紛れもない動物である。
その大きさ、およそ1mm。
クラシカルアイだとまったくその存在に気づかないかもしれない。
しかし彼らは、時にピョンピョンピョンピョン、ナマコの表面を高速で激しく動き回るのだ。
いったい、なんじゃこりゃ??
初めて気がついた当時は世の中にまったく情報が無かったので、勝手にピョンピョン虫と名付けた。
ちなみに、拡大するとこんな形をしている。
こうして写真で見ると、なにやら可愛げがなくもないけれど、写真は一部を切り取っているだけだからこの程度の数で済んでいるのであって、これらが時には局所的にビッシリとナマコの表面を覆っていたりするのだ。
異形をことのほか嫌う現代日本人にとっては、寒イボ級かもしれない。
もっとも、そもそもナマコは苦手……という方には、一生縁が無い生き物であることだけはたしかだ。
節足動物に見えるこのクリーチャー、その昔はこの方面に人一倍詳しかったオタマサによれば、コペポーダの類ではないかという。であれば、羽子板の羽部分は卵だろうとも。
なるほど、そういわれてみると卵のように見える。
ナマコの表面でいったい何をしているのかまったくわからないけれど、ともかくも繁殖しているからには楽しく暮らしているのだろう。
その後時代が進み変態社会人が大手を振って表社会を歩く世になったおかげで、今ではこういったミクロの住人までが、レジャーダイバーの興味の対象となり、情報も数多く得られるようになっている。
ナマコだけではなくヒトデにもよくついている。
ヒトデでよく観られるもののなかでは、↓このタイプが人気のようだ。
ヒトデの体色に合わせているのだろうか。
変態社会人ということでは人語に落ちないオタマサがこれまで撮影したなかでは、カイメンについていた↓こいつがとりわけ美しい。
意外なところでは、なんとウミウシ(オトヒメウミウシ)についているものまでいた。
拡大。
これらがすべて同じ種類というわけではないのだろうけど、では宿主ごとに色味の異なるものたちはすべて別種なのだろうか。
1匹1匹はクラシカルアイには見えないほど小さくとも、その大繁栄ぶり、恐るべし。