其之十二
冒頭の写真をご覧になって、いったい何が写っているのかすぐにおわかりの方は、間違いなく変態社会の住人であると断言できる。
ちゃんと撮れていてもなおわかりづらいというのに、このサイズの写真で、しかも特にクローズアップにしているわけではないのだから。
いったい何が写っているのか。健全社会にお住まいの方用に、写っているものをわかりやすく絵にしてみよう。
こういうものが写っている。
なんだかチャンプルーを作っているときにフライパンからこぼれたソーメンのような白いものが、海底にビヨヨヨ~ンと延びているのだ
イラストでは本数を省略したけど、実際はもっとたくさんのソーメンが延びている。
ソーメンが何本も延びているけれど、イラストに明らかなとおり、実は中央部分で集合していて、岩穴の中へとつながっている。
そう、これらのソーメンは、1匹の生物なのだ。
その証拠に、どれか1本をピンと触ると、シュルシュルシュルシュル……と全部のソーメンが引っ込んでいく。
その様子を動画で撮ってみた(引っ込むのは50秒くらいからです)。
スパゲッティ・ワームのお食事。
(1分のYoutube動画)
せいぜい1本の長さが30cmくらいだからそれほど脅威ではないけれど、これがオオイカリナマコサイズだったら、その不気味さはB級SFホラーどころではないだろう。
触る前にソーメンを1本1本よく見てみると、表面に砂粒をたくさん載せている。
そのままずっと見ていると次第次第に載る砂の量が増えていき、体の表面に砂が溜まると、すべてのソーメンがシュルシュルシュル…と穴に引っ込んでいく。
どうやらボネリムシと同じように、砂中に含まれる有機物を欲しているのだろう。
はてさて、コイツはいったいナニモノか。
さてこの生物、例によって日本の図鑑にはどこにも見あたらない。
日本の図鑑には載っていないけれど、洋書の図鑑には当然のように載っている場合もある。英名では、スパゲッティ・ワームと呼ばれているようだ。
フームなるほど、海の向こうではソーメンではなくスパゲッティか…。
このスパゲッティ部分はフィーディング・テンタクルズというそうだ。食用触手ってところだろうか。
で、海外のこういうマニアック生物系のサイトを探ると、こんな生物の人目に触れない部分の正体をわざわざ図解してくれていた。
いやはや……。
こんなものがあの穴の中で蠢いておるのですなぁ。