其之六
一見何もいないように見える砂底には、実に多種多様な生き物が蠢いている。
「蠢いている」だけあって、奇妙奇天烈なクリーチャーが多い。
冒頭の写真の生き物を始めてみたときは、一瞬我が目を疑った。
「毛虫が海に!?」
まさか毛虫が海にいるわけないと思いながら調べてみたら、実はその名も「ウミケムシ」なのだった。
ウミケムシはゴカイと同じ多毛類で、ウミケムシ目ウミケムシ科に属し、なんと120種もいるそうだ。
もちろんながら、写真のウミケムシがいったいどの種類なのかはワタシは知らない。
種類を問わず、ウミケムシ類にはその毛に毒があるらしい。
ウミケムシに刺されたというオロカモノが身近にいないので詳しい症状は知らないけれど、かなり痛むそうな。
投げ釣りなどの外道としてかかってくるそうで、釣り業界では昔から危険な生物として広く認識されているという。
でもこんな2cmほどの生き物が釣られたりするんだろうか?
…と思ったら、種類によっては13cmにもなるでっかいものもいるようだ。
10cm超のウミケムシなんてこれまで観たことはないけど、2cmほどのものでもナリは小さくとも毒は強いかもしれない。
見るものすべて触ってみなくては気がすまない…という感触フェチの方は気をつけよう。
さてウミケムシ、このテのクリーチャーでは珍しく、昼日中から砂底をモゾモゾ徘徊している姿をよく見かける。
なにかのフンを探しているらしい。
ウミケムシはスカベンジャーなのだ。
そのため冒頭の写真のような食事中のシーンを目にする機会が多い。
面白いことに、ウミケムシは体がわりと透明なのか、食べているフンの色に染まっていく。
赤いフンを食べているものは赤っぽくなり…
茶色いフンなら茶色っぽく…
そして黄色っぽいものを食べると黄色くなっている。
↑この写真の場合などはもう1匹加わって、フンを前に2匹で盛り上がっていた。
陸の毛虫といえば植物食のモノが多く、種類によっては害虫になっているものもいる。
それに比べて海のケムシは、いろんな生き物のフンを食べて海底をきれいにしてくれているお利口さんなのだ。
だからといって、お近づきになりたい、という方がたくさんいらっしゃるとは思えないけど…。