北のマスターのお店「Bar KOSHI」は酒を飲むところである。 そこで、北のマスターのお店で飲む前に、食事をかねて居酒屋で1次会を、ということになっていた。 なので本来であればお店の準備で忙しいはずの時間に、北のマスターは我々の案内をしてくださっているのである。 そんな彼が案内してくれた道のりは、さすが酒飲み、全国あまねく酒場を放浪する吉田類も真っ青の飲み屋街放浪記だった。 仙台は空襲で焼け野原になった後、計画的に整備された機能的都市である。 どこに居ても、たとえ後姿でも、いつも絵になるT夫妻。 このあたりの界隈に、お2人が初めて出会ったというお店もあった。 ああ、昭和の香りが……。 実に魅力溢れる界隈。 しかし、そんな酒飲みにとって魅力溢れる界隈にも、那覇の浮島通りや農連市場同様、再開発という名の魔の手が迫っているらしい。 再開発が目指す先は、こういう世界なのだろうか。 近代的なきらびやかな世界も、それはそれであってもいいとは思う。けれど、ともすれば場末と称される界隈でコツコツと頑張ってきた人々やそこを愛してきた方々の思いをも汲み取る度量の大きさを、行政には強く求めたいものである。>特に復興途上の被災地の行政。 短時間ながらも仙台のディープな飲み屋街探訪を経て、ついに我々は今宵の宴席の場へと辿り着いた。 みんな酒飲むモードになっているため、こうして旅の記録を残そうと写真を撮っているヒトのことなど眼中にはなく、誰も彼もがカメラ目線じゃなくて入店目線なのだった。 その名も「伊達藩長屋酒場」。 「ここ一軒で宮城県。」 そう謳うだけあって、酒から肴から、ありとあらゆるご当地メニューがてんこ盛りなのだ。 潜り戸を抜けて店に入ると、そこは鬼平が座っていそうな内装のカウンター席や座敷が。 手前でピースをしているO嬢は、昨夏タコと戦っていたヒト。 仙台チーム各隊すでに勢揃い♪ 20畳くらいあるこの座敷すべて貸切状態なので、それらを思うままに配置換えし、落ち着いたところで乾杯!! さあ、いよいよ宮城県をいただくのだ。 「どうぞ、好きなのをいくらでも選んでください!」 仙台チームの号令一下、さっそく吟味を始める東京方面からお越しのレディース・フィフティーズ。 僕も臨戦態勢ではあったものの、なにしろハナから足が地に付いていない。メニューを見ても、まったく頭の中で映像情報と合致しないから、何がなにやらさっぱりわからぬ。 ただ、このあたりの冬といえばタラちゃんが旬であることは知っていた。 「それって韓国料理だよ、だんな」 うちの奥さんからツッコミが。 かててくわえて…… 撮影:オタマサ 和服美人からお酌していただくだなんて……。 そのうえ土瓶は南部鉄、注がれるぬる燗は地元の銘酒。目の前には刺身盛りから数々の小鉢まで色とりどり。 事ここに至れば、肴がどうの、酒がどうのなんてもうどうでもいいじゃない。だって美味しいんだもの、楽しいんだもの!!炙りさんま寿司、美味しかったなぁ…… 一方。 ここはとにかく北のマスターの店へ行く前の、食事代わりの1次会……などという話は彼女たちの中では5万光年彼方に消え去り、開幕早々ぶっちぎりの首位独走で優勝してしまう一昔前のジャイアンツのように、突っ走る突っ走る。 同じ枠に入っていたイカママさんは、ちゃんと召し上がれたのであろうか?? やがて場がこなれてくると、仙台チームZの主要メンバーであるOSコンビが、我々を手招きしていた。 「センダイシローに会いに行きましょう!」 へ?センダイシロー?? 数年前に亡くなった太平シローなら知っているけど、センダイシローとは初耳だ。 聞けば、大阪におけるビリケンさん級に超有名なキャラがここ仙台にいるらしい。センダイシローがいるところ、商売繁盛間違いなしという、商人にとってまことにご利益のあるお方なのだそうな。 そんなセンダイシローがこのお店に?? 撮影:O嬢 「ボ…ボクが、セ…仙臺四郎なんだな」 <それは裸の大将だって。 この仙臺四郎さん、カウンター席に座る他のお客さんに並ぶようにして普通に席に着いていたから、わりと暗めの照明の下で、ホントのお客さんと勘違いしたほどだ。 仙台では当たり前に有名な仙臺四郎も、こうして立体化してお店の中に着座しているというのはわりと珍しいそうで、これも何かのご縁とばかり、ありがたく一緒に写真に写ってもらったのだった。 それはともかく、ここでこうして写真に写してもらって改めて気づかされた。 黒い。 これ、沖縄にいれば冬でもまったく目立たないんですぜ。 どんどん座がくだけ始めた頃、北のマスターが一足早く席を発たれた。 いよいよ今宵の本番だ!! |