この日我々を案内してくださっているTさん夫妻と、このあと別の場所で我々と合流する予定の北のマスターとの電話でのやりとりの端々に、 にっか という単語が出てくることに気づいていた。 ところがその「にっか」というのは、なんとニッカウヰスキーの宮城峡蒸留所のことだったのである!! ニッカウヰスキーといえば北海道余市だけだと思っていたら、ここ仙台にも蒸留所があったのだ。 ニッカウヰスキーの銘柄のひとつにもなっている、創始者竹鶴氏は20世紀の初め、スコットランドにてウイスキー作りの修行をした。 それが軌道に乗ると、今度は余市とは異なるタイプのウイスキーを作って琥珀の世界を広げたい…ってことで、ここ宮城峡に第2の蒸留所を設けたのであった(ちなみに正式な住所は青葉区ニッカ1番地)。 そんなニッカウヰスキー宮城峡蒸留所、略してニッカにて、北のマスターや仙台チームZのみなさんと合流。 もちろんガイドさん付きである。 しばらくロビーで待機した後、真っ赤なコートに身を包んだガイドさんに連れられて、オトナの社会見学スタート。 ガイドの可愛いおねーさんが教えてくれるウンチク話などとっくの昔にご存知に違いないにもかかわらず、みんなと一緒に静かに真摯に耳を傾けている北のマスター。 屋内には、まさに今ウイスキーが出来上がらんとす、という様々な過程が。 このポットスチルのナニがどうかしてどうかすると、ウイスキーの質がまったく変わるモノになるらしい。 赤いオネーサンはキチンとマニュアルどおりに説明してくれる。 その程度の者にとっては、その緻密な製造過程の知られざるヒミツよりも、 こうして静かにドドンと熟成されている圧倒的な量の樽のほうにこそ興味が湧く。 どこにいても絵になる2人なのである。 それは、Tさんの傍らの樽にヒミツがあった。 ちなみにこの宮城峡蒸留所が誕生したのも69年だから、きっとここで生まれた最初のウイスキーってことなのだろう。 こうしていろいろと見学させてもらった我々夫婦の最大の関心事はいったい何であったか。 <なんなんだよ、お前ら。 でもあなた、敷地内の池ですぜ? 仙台チームの方々に尋ねてみると、 「渡ってくるんじゃないですかぁ」 とのこと。 ……と納得しかかったものの。 「あ……あれはあそこで飼ってるんです♪」 へ? さすが天下の大蒸留所、飼育の規模が違うわ……。 というか、誰だ、野生の白鳥が渡ってきているのだなんてデマを流しかけていたのは!! 訊いてみてよかった。 こうしてひととおり見学を終えると、ゴール地点はゲストホール。 ニッカウヰスキーの選りすぐり&地域限定のウイスキー2種類と、わりと度数の高いアップルワイン(マルサーラワインのような舌触り)の合計3タイプのお酒をいただけるこの試飲、各1杯ずつなどという制限はなかったものの、 「くれぐれも 適量でお楽しみください」 あらかじめおねーさんからそう釘をさされて臨むようになっている。 ……美味い。 カウンターテーブルにはチェイサーもしくは水割り用のお水と氷が用意されていて、頼めばハイボールにもしてくれる。 みなさんの結論が徐々に統一されていく方向にあるようながら、ワタシはといえば…… 一口ずつ飲んでみると、 「フムフム、こっちのほうが美味しい気がする!」 と思う。 「あれ?やっぱこっちの方が美味しい??」 そして最終的には、 「………どっちも美味しい。」 で終わってしまうのだった。 しかし言い訳をさせていただくなら、試飲のお酒を忘れてしまったのもしょうがなかったのである。 これ。 竹鶴35年。 35年!! 一般的に商品として店頭に並ぶのは、21年がマックスの竹鶴。 ためしに酒屋の通販サイトを見てみると、この竹鶴35年はなんと6万円を超えるお値段。 ボトルは絶対買えないけど、試飲だったら……… そのお値段、15ミリリットルで 1700円。た……… 高ッ!! 僕が地元の人間だったら絶対に手を出さない。 というわけで、決意の1700円試飲!! これがあなた、 激ウマ!! その衝撃は、かねやま30年を初めて飲んだときに勝るとも劣らない。 …と、ヒトがなけなしの小遣いをはたいて買った決意の35年を、 インターセプトするなッ!! ともかくこの35年のおかげで、先ほどまで楽しんでいたはずの他のお酒の味わいは、遠く銀河の彼方へと消え去ってしまったのだった。 無料試飲コーナーで飽き足らずこの有料試飲コーナーに来ていたのは我々だけではなかった。 その間、辛抱強く待ってくださっていた仙台チームの方々。 ホントにもう、ワガママし放題で申し訳ございません……。 ところでこのゲストホールでは、お酒はもちろんのこと各種酒のアテも売られていて、ここでしか手に入らないものもある。 なかでも興味を引いたのがこれ。 その名もスナックモルト。 小袋の中身はこんな感じ。 不思議的にクセになる香ばしい味。 いやあ、美味しかった美味しかった。 さあ、次はいよいよ温泉だ!! |