プロローグ・ニセコ
スキーに行こう!
この旅行記コーナーにはこれまで4回分が納まっている。そのうち本業であるダイビングに関するものがいくつあったか。
なんと驚くことにモルディブ編の1回のみ!!
こんなことでいいのか、ダイビングサービス!
………とは微塵も考えない。
今回はスキーである。
ということを超有名某海洋写真家に告げると、
「スキーに行ったなんて言ったら、読者はみんなひっくり返るでぇ〜」
などという。
でも心配はない。みなさんがひっくり返る以上に、僕たちは存分にひっくり返ってきたのだから。
何を隠そう、僕はスキー暦18年である。
え!?意外………
と思われたろうか?
でも、ダイビングでもよくいらっしゃるでしょう、ダイビング暦20年でタンク本数13本……っていう人が。それと同じ。18年前に修学旅行で3日やっただけなのだ。ハハハ。
一方、うちの奥さんといえば、これがまるっきり初めてである。
つまり、2人ともスキーに特に思い入れがあるわけでもなく、その楽しさの片鱗すら知らない。なのになぜ歯を食いしばり君は行くのかそんなにしてまで………。
これが困ったことに、さしたる理由はない。我々の行動を深く考えてはいけない。
ただしきっかけはあった。
昨年(2002年)の夏にいらっしゃったゲストは毎冬スキーを楽しんでおられる方で、その際の様子をデジカメの簡易ムービーで手軽に見せていただいた。それこそがすべての始まりなのである。僕は驚いてしまったのだ。
何に驚いたって、そのゲストが予想外にスキーが上手かった………ってことじゃなくて、周りに人が全然写っていなかったってこと。カナダかどこかの海外のスキー場かと思ったほどだ。
ところがそこは、都内からでも気軽に行けるスキー場だった。
え?最近のスキー場ってこんなに空いているの??
10年くらい前の都内では、スキー場行きの夜行バスに、大きな荷物を引きずりながら老若男女がズラズラ乗車する、という光景が普通だった。スキー場といえば、ハデハデ仮面のようなウェアに身を包んだスキーヤーたちがリフト乗り場で長蛇の列を作るもの、と思っていた。
そんなところに紛れ込むのはご免こうむりたい………と思い続けてはや15年。が、こんなに空いているんだったら一度は行ってみたいなァ………。
というわけで、そのムービーを見せていただいて以来、スキーをおやりになるゲストには、我々はことあるごとに最近のスキー場の様子についてうかがうようになった。
そのうちに、うちの奥さんはいまだかつて北海道に足を踏み入れたことがないので、いっそのこと初スキー&初北海道ってことにするか!という大胆かつ無謀な案が生まれてきた。
以後、北海道に関してもゲストにいろいろお話を聞き、その情報収集によってどうやらバカでも北海道でスキーができそうだ、という結論に達した。しかし北海道といっても広うござんす。いったいどこへ行けばよろしいので………?
とにかく目的は雪なので、中途半端な場所は避けたい。北海道一の豪雪スキー場とはどこだ?
ニセコだった。
いや、もちろん、みなさんが言いたいことは重々承知している。
スキーのスの字も知らない我々がいきなりニセコだなんて、体験ダイビングをしにいくためだけにモルディブに行くようなものである、ってことはわかっている。
でも、モルディブでの楽しみは何も深い海底に群れ踊る魚群ばかりではない。
渚に揺れるココナッツ、白い砂浜、青い空。それを楽しみに行ったっていいじゃないか。
雪深いニセコならではの楽しみは、星の数ほどあるに違いない。たとえスキーで楽しめなくても、雪を味わいに行こう!
こうして、旅行のベクトルはまっしぐらに北海道・ニセコへと伸びていった。
耐寒装備を充実せよ
………伸びていったのはよかったのだが……。
どうしよう、なんにもわかんないよぉ……。
そりゃ、飛行機だ電車だっていう各種手配の仕方はわかるけどさ、冬の北海道、スキーをするにはどうしたらいいのだろう?って知識がまったくない我々である。
一口にニセコっていっても、範囲が広くてスキー場が3つも4つもあるのに、どういったところがいいのか、という客観的な基準が皆無だし、宿一つ選ぶにも、スキー場までの距離だなんだと考えなきゃならないし、道具など何一つ持っていないから、どこまでレンタルできて最低限何を持ってなきゃならなくて、そもそもいったいどこで借りればいいの?ってことからしてさっぱりわからない。
そういう具体的な話を知りたくなった頃、すでにクロワッサンはシーズンオフに突入し、ゲストにうかがうことができなくなっていたのだった。
こうして自分たちが未知なるレジャーをやろうとするに至り、シーズン中、体験ダイビングをはじめとする初体験レジャーをクロワッサンでやろう、と決めてくださったゲストの方々の勇気につくづく敬服した次第。よくうちなんぞを選んでいただけたよなぁ……。ありがたや、ありがたや………。
わからないことだらけではあったが、最近はこんな離島にいても情報収集ができる世の中である。見知らぬ人の体験談なども非常に重要な資料となった。HPを作っている宿もたくさんあるし、スキー情報だって盛りだくさん。ホント、世の中便利になりました。
てなわけで、なんとか旅程は決まり、スキー場も決まり、宿も決まった。1月出発だというのに11月には準備完了。
大まかなスケジュールが決まったので、しばらくの間すっかり安心しきっていた。もうあとは出発するだけ、とさえ思っていた。
ところが。
旅行出発まであと半月ほどくらいになって、ボチボチ雰囲気を盛り上げようと思ってさらにインターネットなどで調べていくうちに、衝撃的な事実が次々に明らかになっていった。
北海道は寒い!!
いや、その…なんというか、冬の北海道、寒いのは当たり前なんすけどね………。でも、マイナス10度だ20度だって言われてもまったく想像もつかないわけ。こんなもんかな、と軽く覚悟をしていたものの、人々の体験談などを読んでいるうちに、その覚悟がいかにアメリカ人の特大ケーキ並に大甘だったかということが判明してしまったの……。
普段の僕は、当HPをご覧になって質問してくださる方々に対して非常に冷たい。
体験ダイビングって楽しいですか?
スノーケリングと体験ダイビングとどっちが楽しいですか?
などという主観に関する質問は無視することに決めている。
そのほか、この時期の沖縄はどんな服装がいいですか?という質問もある。そんなこと、子供じゃないんだから天気予報で気温見たらだいたいのことがわかるでしょうが。
………と思っていた。
が。
僕はそれを深く深く反省するのだった。
だって、自分が宿の方に
「あのー、この時期どんな服装で行ったらいいんでしょうか?」
って訊いてんだもの………。
宿の方のアドバイスによると、ゲレンデは非常に寒くなるので、できれば顔を覆うものがあったほうがいい、ということであった。
顔を覆うもの………?
おお、目出し帽か。
こんなもの、いったいどこで売っているんだろう??
いいや、通販で買っちゃおう。
ところが、「目出し帽」でいくら検索しても何一つ出て来ない。
スキー用品から帽子屋さんから登山用品からなにから探しても、まったく該当者無しなのだ。
おいおい、目出し帽って、あまりにも世の中荒んでしまって銀行強盗が多いから発禁処分でもくらったのか??
どうにかこうにか、「フェイスマスク」なる言葉を発見し、バイク用品関連から調達。こんなパンツのできそこないみたいなのがなんで2000円もするのかなぁ……。
そうやってせっかく苦労して手に入れたというのに、ビックリ仰天の事実を知ってしまった。なんと目出し帽では検索できないけれど、「目出帽」だといくつも登場してくるのである!!しかも、どれもこれも買ったヤツより暖かそう………。
おまけに、ちょっと冬が深まったこともあってか、その後ホームセンターに行くと、農機具コーナーにいくらでも農作業用目出し帽が売られているではないか。なんだったんだ、あの苦労は……。
そのほか、「冬靴」という存在を知ったのも衝撃的だった。
なんだ冬靴って?と思われるかもしれない。でも北海道ではごく当たり前の名前なのである。早い話が凍った路面で滑って転んでしまわないための靴で、靴の裏に氷をガシッと捕えるスパイクがついているものである。

体重のわりに接地面積が小さな僕は、人一倍転びやすいに違いない。ましてや普段凍った地面を歩く経験をしていないのだから、ここはひとつ冬靴を装備しておくか。
……冬靴ってどこで買えばいいの?
沖縄で売ってるわけないものなァ。
じゃあ通販かな、と思ってヤフーのショッピングなどで検索してみたものの、当然ながら「冬靴」なんて名前で出てくるわけがなかった。
こりゃ、現地調達しかないのかな。
でも、慣れない靴をいきなり履いたら足が痛くなるかもしれない。ここは是が非でも事前に履き慣らしておきたかった。
さて、どうやって購入するか……。
その答は、意外なところからいただいた。
それに関してはいずれ触れることになるだろうが、とにかく冬靴も完備された。さらに、この先着る機会があるのかどうかはなはだ疑わしかったものの、ペプシマン御用達のスポーツ用品店、那覇市天久の「スポーツDEPO」でダウンの上着も手に入れた。
沖縄にスキーウェアなんて売ってるのかね?という興味も湧いたので覗いてみると、予想に反してこのDEPOちんではしっかり売られていた。
このスキーウェアの地味なこと地味なこと。
10年ほど前のあのガンダムのような派手派手ウェアはいったいなんだったのかというくらいに、どれもこれも落ちついた色ではないか。ウェットスーツ同様、結局行きつく先はこういうことなのかな。
てなわけで、なんとか旅程は決まり、スキー場も決まり、宿も決まって、服も揃った。ホッカイロも仕入れた。もちろん、ジジシャツ、ババシャツも完全装備である。
もはやこれで寒さに関しては怖いものはない。マイナス15度なんのその、矢でもテッポウでもなんでも来い!! |