
14・新世界紀行〜天王寺動物園〜
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  新世界という、旅行の目的でもあった憧れの地に来たわけである。  ならば。  が。 というわけで、この日午後はゆっくりと動物園を散策。  天王寺動物園だ。  ……が。 こ………こんなに狭かったっけ?? 子供の頃の強烈な印象では、上野動物園なみに広い広いワンダーランドだったのだが……。  でもあれかぁ、たしかにその後大人になって上野動物園や多摩動物公園に行ったとき、めっちゃ広い!!と驚いたんだよなぁ、たしか。  けれど、山椒は小粒でぴりりと辛い。  そのうえ2006年には、開園以来の有料入場者数がついに1億人を突破。 その天王寺動物園へ!! 
 お天気の良い平日の昼下がり、いい大人がのんきに動物園なんぞにいていいのだろうか…… ……という良識ぶった躊躇は、それ以前の問題として昼前からすっかり酔っ払っている人間にとってはまったく意味がない。  入場料は一人500円。 さっそく中へ。 おお、なにもかもみな懐かしい…………  ………と思うほどの記憶はこれっぽっちもない。それにしても、いきなり入ったところすぐの場所にゲーセンコーナーなんてものは昔はなかった気がする。  したいんだろなぁ…最近の子供は。  さて、動物園がたいていそうであるように、この天王寺動物園内は鳥羽水族館方式だった。 
 天王寺動物園HOMEPAGEより  なので興味に導かれるままに、適当に巡ってみた。 ……ここもやはりマニアックだった。 
 噛まれれば、指どころか手首からなくなりそうなほどに巨大なワニガメ。  こういうわかりやすいワニガメとかならまだしも、その多くは「どこにいるの??」的動物なのである。 動かねぇ……。 ジ―――ッとしているのだ、これがまた。 いきなりマニアックなところから攻めてしまった我々は、気を取り直し、動物園の主役といってもいいアフリカの動物たちを見に行った。  驚いた。 うちの奥さんが思わず感心したほどに、いかにも現地っぽく作ってある。なにしろ清水の舞台から飛び降りてマサイマラまで行ってきた我々がそう思うのだから信じてもらっていい。  ただ……。  園内には、まるで経営が見直される直前の郵便局なみに、いたるところにトイレがある。  天王寺動物園には、ライオンもいるしトラもいる、知らなかったけどコアラまでいる。  しかし。 キーウィ!!  そう、ニュージーランドにいるという飛べない鳥である。 ……というのは、何も鳥が好きなうちの奥さんだけのマニアックな話なのではない。ここの入場チケットにはちゃんとキーウィの写真が使われているのである。  そりゃそうだろう、キーウィを展示している日本の動物園なんて、他にあるのだろうか?? これは是非見たい!!  いったいどこにいるのかというと………。 これは見なければ!!  夜行性動物舎は、動物園を南北に分ける回廊を境に、アフリカの動物たちとは反対側の南園側にある。  巣箱からチョコンと顔を出すフクロモモンガなんてチョーカワイイ。 キーウィコーナーにたどり着いた。  ん??  ひょっとして、本日は都合により奥の間に?? 「ほら、ここにいますよ」  先ほどから気づいていたのだけれど、園内の随所にこんな感じのおじいがいる。  その自主的シルバー人材おじいが、わりと広い飼育ケージのすぐ手前にある大きな板切れのようなものの下を指差していた。  あっ!!  なにやら板の陰でゴソゴソと動いている。  いやぁ、たしかにキーウィ。  影しか見えないじゃん…………。  親切なおじいがいなかったら気づかなかったじゃないか。  そうやって再び訪れてみると…さっきよりさらに手前に来て、動きも活発になっていたけど…… すると、20代前半と思われる若いカップルがやってきて、彼女のほうがいやに熱心にキーウィを見ようとしていたので、先ほどのおじいのまねをして場所を教えてあげた。ペイフォワードである。 でもやっぱり当然ながら影しか見えない。 「後でまた来よう!!」  オネーチャンはそう言ってその場を去った。 さて、再び明るい世界に戻った我々は、こういう動物園にはたいていいそうなオウム・インコ類を探してみた。ひょっとして、この鳥の楽園ってところにいるのかも??  さっそく行ってみると、そこは鳥は鳥でも水鳥たちの楽園だった。 …と感心しかけたそのとき、一枚の説明書きが。 
  野生かい!! したたかといえば、今回のこの動物園でのベストショットがこれ。 
  ピンと立った白い冠羽がかっこいいゴイサギである。 なんでこんなに人を恐れないのかというと……  ここはアシカの池で、その傍らにアシカの餌を売る屋台があって、サンマかアジかなにかの切り身を一パックいくらかで販売している。 ぜ〜んぶゴイサギやアオサギたちが掻っ攫っていくのだ!!  こいつら、池のフェンスに止まりながら、お客さんが餌を放り投げるのを虎視眈々と狙っているのである。 これがホンマのサギや!! おあとがよろしいようで………。  |