全長 10cm
よく見ればとても美しい魚ながら、沖縄の海で潜ればほぼどこでも普通に観られる魚だから、わざわざこの魚を指し示すガイドなんて沖縄には滅多にいない。
畢竟、注目するゲストはあまりいない。
でもこんな顔を見てしまったらどうだろう??
どんな魚であれ子供の頃はあどけなさがある。
横から観るとチビちゃんはこんな感じ。
正面から見た姿ほどではないにしろ、大人と比べるとやはりやたらと愛くるしい。
背びれ後端の眼状斑がチビの印で、言ってみれば蒙古斑のようなものだ。
ちなみに、一番上の写真は大人のオスで、メスはこんな感じ。
オスとメス、さてどこが違うでしょう??
まるで「7つのマチガイ探し」のようだけど、注目すべきは背びれ後端部分。
幼魚の頃にはあった眼状斑が大人になると消失し、オスになると(雌性先熟の性転換をする)その部分に模様が入るので、他のアブラヤッコ属の仲間と違い、雌雄がひと目でわかる。
彼らはリーフ際の浅いところで普通に観られ、岩穴にすぐ逃げ隠れする。
ただしコースはだいたい決まっていて、ジッとしていればすぐに同じところに戻ってきてくれるから、撮りにくそうで実は撮りやすい。
少しでもお近づきになれれば、実は彼らは彼らでやけに楽しげであることがわかる。
なんともゴキゲンそうな様子。
梅雨明け頃から始まる繁殖期には、黄金色に染まった水面がやがて夜の帳に覆われ始める日没ごろに、雌雄が仲睦まじく産卵する姿も観ることができる。
ビールの誘惑に勝てる方は、是非一度ご覧ください。< もちろん、セルフで♪
※追記(2020年6月)
今年(2020年)の初夏は、いつもと違う。
そう、コロナ禍のせいで休業しているおかげで、お金は無いけど時間がたっぷりある!
おかげで、小型ヤッコをはじめとする魚たちの産卵シーンを観たさに、実に四半世紀ぶりくらいにサンセットダイビングもできてしまった。
梅雨頃から梅雨明け間近の日没前は、数多くの魚たちが繁殖行動を見せる。
このアカハラヤッコも、日没ちょい前くらいから俄然やる気モードになってきた。
これは小型ヤッコではお馴染みの「ナズリング」と呼ばれる行動で、オスが鼻先でメスのお腹を刺激しつつ、上へ上へと誘導する。
ナズリング中のオスの顔は至って真剣だ。
メスはメスで、ここまでくると完全に盛り上がっているから、もういつでも産卵OK状態になっている。
そして……
これで産卵2秒前くらい。
もっとも、四半世紀ぶりくらいにアカハラヤッコのナズリングを観ているワタシにこれが正確に2秒前であることなどわかるはずはなく、「アッ!」と思ったときには……
……産卵終了(矢印の先の白いモヤのようなところが産卵放精のあと)。
ナズリングから産卵に至るまではさほどの時間はかからず、それほど上昇するわけではない。
にもかかわらずいろんな角度からナズリングの模様を撮れているのは、すなわちあちこちでアカハラヤッコたちがこのように産卵していたからこそ。
でもチャンスをすべて活かせなかった……。
なので、反省を踏まえつつ、翌日もほぼ同じ時間に同じ場所で潜ってみたところ、前日頑張っていた子たちがこの日もまた頑張っていた。
このまま産卵に達しそうな勢いで、ナズリングを始めるアカハラヤッコ。
これで1秒前か?
今度こそ!
ああ、またしても遅かった……。
産卵に至るまでは懇切丁寧にメスを導くオスながら、コトを済ませるやいなや、あっという間にオスはその場を去る。
0.3秒を誇る次元大介も裸足で逃げだす早撃ちの放精を終えたオスはとっとと下に戻ってしまうから、タイミングを逃してしまうと産卵後の卵とメスしか写らないのだった。
ジャストタイミングをものにするためには、さらに場数を踏んで数多く観るしかない……。
※追記(2023年6月)
コロナ禍中に通常営業を終了したおかげで、コロナ禍がなくても夕方潜りに行けるヒマができた。
だからといってジャストタイミングで産卵シーンを撮るのは至難のワザなので、いっそのこと動画で撮っちゃえ…
…と臨んだ6月(2023年)の夕刻、期待どおり海中が薄暮に包まれると、それまで通常モードだったアカハラヤッコたちが、産卵モードにチェンジ。
ライトを装備した動画用コンデジをすかさず向けてみる。
しかし産卵という実に繊細な一大イベントに際し、無遠慮な明るい明るいライトはメスの気を削ぐこと甚だしく、産卵行動を中断してしまった。
すまぬすまぬ…とばかりライトを消してみると、あっという間に産卵。
ウーム…ライトを当てつつ産卵してもらうには、どうしたらいいのだろう?
数日後、光量を落として臨んでみた。
すると…
やっぱりダメか…と諦めかけたワタシとは違い、オスは粘り強かった。
おかげで産卵シーンまで動画に収めることができた(最後に2匹がパッと分かれる直前に産卵・放精してます)。