全長 35cm
自分の姿を目立たなくさせるために、様々な工夫をしている魚たちは多い。
ゲストを案内しているとき、そんな魚たちを発見するたびに
「ここに魚がいるのわかりますか?」
と質問しては、ご自身で探してもらっている。
このアマミウシノシタもそのようなネタのひとつで、砂地にシュポッと埋まり、小さな目とおぼろげな体の輪郭だけを外に出している。
砂に埋まっているだけでも慣れない方には発見しにくいだろうに、そのうえこのアマミウシノシタは予想を遙かに超える巨大さである。
この状態から、体に載っている砂を払ってみると……
微妙に模様が入っている全体像が明らかになる(わかりやすくするため、写真はコントラストを強めにしてあります)。
この模様は気分によって濃淡を変えるようで、やけに濃くして目立っていることもある。
アマミウシノシタ同士が争っているのを一度観たことがあって、どうやら興奮色になっていたらしく、かなり濃い模様になっていた。
体は巨大なわりには目が小さく、体の先端のほうに、申し訳程度にチョボチョボとくっついている(青矢印)。
胸ビレ(赤矢印)ももはや何の用もなさないくらいに小さく、印象としてはノボーッとしてのんきそうな気のいいやつ、という雰囲気だ。
そんな彼が、「ワタシは砂底…」とばかり砂に埋まっているときに……
ちょいと失礼して目のあたりを棒などで刺激すると……
「オオイ、僕は魚だよう」と訴えるかのように、下半身を持ち上げることもある。
体の上に載っている砂を払いのけると、しばらくじっとしていることもあるけれど、遅かれ早かれ大島屋海苔のCMのごとく「ママぁ、裸じゃイヤ〜ッ!!」とばかり、俊敏な動きで砂中に没する。
この砂遁の術はかなり見事な芸なので、動画で是非ご覧あれ。
水納島周辺で見られるカレイやウシノシタの中では、ずば抜けて大きなアマミウシノシタ。
でも、彼らにだって子供の頃はある。
このスイカの種のような黒いものが魚だと気づいたときには、さすがにビックリした。
刺激を与えてみると、体を波打つように動かす。
その動き、紛うかたなきウシノシタ。
時には能動的に動くこともあって、どういうわけだかグルリと向きを変えていた。
体の上に載っている砂は、本人が能動的に載せているもので、さらに小さい子になると、さほど砂を載せきれないらしい。
上の写真と砂粒のサイズは同じだから、どれほどこの子がチビターレかおわかりいただけよう。
おわかりいただけない方のために、毎度おなじみ対人比。
これほど小さいとわかりづらいけれど、ちゃんと能動的に砂を背に載せる動きは……
…オトナになってからの砂潜りの達人ぶりを彷彿させる。
こんな小さなチビちゃんが立派なオトナになるまで、どれくらいの年数がかかるのだろう??
もっとも、これがホントに「アマミ」ウシノシタなのか?ミナミウシノシタではないのか?と鋭くマジメに問われると、発音不明瞭にゴニョゴニョ言うしかない。
なにしろ黒いチビターレはこれまで何度も出会っているけれど、その次の段階のサイズはオトナしか知らない。
5〜10cmくらいの チビとか、15cm〜20cmの若魚にまったく出会ったことがないのだ。
そのうち出会う機会もあるだろう……
※追記(2021年11月)
…と書いていたその年(2019年)のうちに、まさに若魚サイズのアマミウシノシタに出会えた。
翌日から師走になるオフシーズンのことで、ビーチで潜っていたら波打ち際の砂浜の斜面が途切れるあたりに鎮座していた。
スイカ擬態(?)のチビターレを除けば、人生最小級のアマミウシノシタだ。
5〜10cmのチビにもきっとそのうち会えることだろう。