全長 25mm
存在は随分昔から一部変態社会方面で知られていたにもかかわらず、和名はおろか新種として学術報告されたのすら近年のことで(2011年)、それまでは長らく、正式には「ベニハゼ属の一種」、一部変態社会では「アオベニハゼ」と呼ばれ続けていた。
ようやく和名がついたと思ったら、変態社会の通称のまま、アオベニハゼ。
そりゃ、ベニハゼの仲間で、他に比べて青いのだから、体を表すという意味で理想的なネーミングではある。
でも青い紅のハゼって、日本語として意味不明になっているような気が……。
ともかく晴れて名前がついたアオベニハゼは、水納島でもリーフ際の壁沿いなどにあるミニチュアテラス状になっているところで、ちょくちょく出会える小さなハゼだ。
浅いところで、しかもこんなに無造作にチョコンとたたずんでいるにもかかわらず、なぜに長らく名無しの権兵衛さんだったのか。
それは、いる場所が暗過ぎて、変態社会人が跳梁跋扈するようになるまで、ヒトの目に触れる機会があまり無かったからだろう。
上の写真もストロボが当たっているからこそ全身が露わになっているけれど、ライト無しだとかなりの暗がりなのだ。
しかもアオベニハゼ自身にとっては充分なスペースのテラスも、我々ダイバーが覗き見させてもらうにはやたらと狭く奥まっていることが多々あり、その姿を観ようにも、真正面から顔だけ見える、ということもよくある。
そこにアオベニハゼがいるとガイドが指し示しても、いわゆるハゼっぽい横向きのフォルムをイメージしていると、その姿を捉えられないかもしれない。
でもなかには、ハゼ本人は外に向かって真正面を向いているつもりでも、スペースの関係で横からそっと覗くことができることもある。
アオベニハゼも写真の天地が実際に観る際の天地と同じで、小さなテラスの左右や天井の壁についていることはほとんどない。
で、このようにチョコンと鎮座しつつも、エサとなるものが漂ってくるとその場を離れてシュッ…と動いては元の場所に戻って来るし、何が目的なのかは不明ながら、ときおりホバリングもしてくれる。
…ということを知ると、今度はホバリング中のより高い位置にいるところを撮りたくなってくる。
ホバリングしている時は妙に気張っているから、各ヒレが全開になってカッコイイのだ。
お、ホバリングした!
うーん、腹ビレの気張り方がイマイチ。
お、またホバリングした!
ああ、目にピントが合わなかった……。
…という具合いに遊ぶことができる。
ただしこのように頻度高くホバリングしてくれるのは、オトナに顕著なような気がする。
他の多くの脊椎動物と同じく、アオベニハゼも幼い頃は体に占める目の比率が大きい。
オトナを見慣れさえすれば、見るからにコドモとわかる。
この子の前でさんざん粘っても、エサを食べるためにシュッ……と泳いで戻ることはあっても、おそらく気張ったホバリングはしてくれないんじゃなかろうか。
ま、顔つきはチビのほうがカワイイですけどね。