水納島の魚たち

アライソコケギンポ

全長 4cm

 この顔にこの髪型!!(?)

 モヒカン系のギンポといえば、トウシマコケギンポが有名だ。

 でも残念ながら沖縄の海でそうやすやすと観られる魚ではない。

 このアライソコケギンポは、トウシマコケギンポによく似たモヒカン頭のギンポながら、沖縄にけっしていないわけではないらしい。

 でも2011年10月に発見するまで、水納島では一度も目にしたことがなかった。

 そしてほぼ1年後の2012年10月を最後に、その後二度と目にしてはいない。

 彼が住んでいたのは水深24mほどの砂地の根。

 本来は浅いところを好むようだから、こんなところにいるはずではなかったんだろう。

 おそらく前年からたて続いていたストロング台風の猛威によって、安住の地から引き剥がされ、右も左もわからない深い場所に来てしまったに違いない。

 だから彼の周りには、同じ種類のギンポは1匹もいない。

 1匹もいないのに、水温が温かくなると、その存在を猛烈にアピールしていた。

 これは巣穴から体をほとんど外に出し、ブルブルブルブルと震えるようにしているところ。

 居もしない彼女に対する求愛行動なのか、それともしつこく写真を撮り続けるワタシに対する怒りの表明なのかはさだかではない。

 いずれにしてもそのおかげで、普段は顔しか見えない彼の体まではっきり見ることができたのだった。

 こうして写真で観るとカワイイ魚だけど、なにしろ小さいから、クラシカルアイではなかなかはっきりとその表情を読み取ることができない。

 ヒトスジギンポサイズをイメージしていたら、発見すらおぼつかないことだろう。

 そんな彼も、ときおりアクビをする。

 ……口はやたらとでかかった。