全長 3cm
春、まだ水温が上がり切らない季節。
安全停止をかね、リーフエッジの浅いところで小魚などを観ていると、なにやら豆粒のような黒いものが、ポンポンポンと飛び跳ねるように動いていた。
妙に気になるその動き、いったいぜんたい何の虫だろう??
着地してしばらく動かなくなったそれを観てビックリ。
飛び跳ねているときはそこだけ見えていた黒いところは全体のごく一部で、どう見ても魚の顔だ。
これはどうやら、ヘビギンポの仲間が婚姻色を出しているようだ。
婚姻色の際に顔が黒くなるヘビギンポ系といえばクロマスクが思い浮かぶけれど、どうもクロマスクではないらしい。
かといって該当者がすぐに思い浮かぶほどヘビギンポ通ではないので、後刻家に戻ってから調べてみたところ、このヘビギンポの仲間はまだ和名が無いらしく(学名はちゃんとある)、ヘビギンポ変態社会の間では、「頭テンテン」と仮称されているもののようだ。
ヘビギンポ変態社会のみなさんが数多くアップされている「頭テンテン」の画像を拝見すると、なるほどたしかに、頭上に細かい点々模様が見える。
でも婚姻色状態だったオスは、別カットを見ても点々がハッキリしない。
このときオスの近くにヘビギンポ系がもう1匹いて、おそらくメスだろうと思って撮っておいた写真を見てみると……
あ、ホントだ、頭頂部(?)に点々模様がある。
やっぱりこの子は、顔を黒くしていたオスと同じ種類のヘビギンポだったのだ。
オスが顔を黒くしてなにやらアヤシゲな動作をしているすぐそばにいたということは、おそらくメスなのだろう。
顔を黒くしていたオスは、この子に猛烈アピールをしていたのか…。
どうやらワタシは、彼の大事な時間を激しく邪魔してしまったらしい。
まだ和名がつけられてはいないようながら、頭テンテン(仮称)は南西諸島の随所で観察されているくらいだからさほど珍しくはないようで、その後も何度か見かけている。
ただし生息場所は通常のボートダイビングで訪れるような場所よりも遥かに浅いところのようだから、フツーにボートダイビングをしているとなかなかチャンスは訪れない。
おまけにヘビギンポの仲間が婚姻色を出して張り切っているのはもっぱら春限定。
それ以外の季節に会えたとしても、会えたヨロコビを感じられるかどうかはビミョーかもしれない……。