全長 12cm(写真は3cmほどの幼魚)
波穏やかな浅所を好むスズメダイのようで、かつて放浪のダイビング主婦時代に竹富島に遊びに行ったオタマサによると、広大な石西礁湖の浅い浅いインリーフのそこらじゅうでこのダンダラスズメダイの幼魚が観られたという。
たくさんといっても群れているわけではなく、1匹1匹が縄張りを主張しつつ、点在していたそうだ。
広大なインリーフを有する近隣の石垣島や西表島でも、おそらく同様なのだろう。
あいにく水納島のように「おだやかな浅所」のエリアが極めて限られた範囲しかない小さな島では、ダンダラスズメダイがたくさん暮らせるような場所が無いからだろうか、出会う機会はほとんどない。
ただし幼魚なら、かつてリーフ際の切れ込みの浅いところで、ふとしたはずみで流れ着いてしまったらしき子を観たことがある。
その証拠写真を残した記憶はあるのだけれど、いったいどこへやってしまったのか、「そういえば写真を撮っていたはず…」と思い出した頃には、それがフィルムだったかデジタルだったかも記憶に無くなっていた。
ああ、水納島で観られた唯一のダンダラスズメダイだったのに……。
と残念がってから随分経った2018年9月。
連絡船が欠航している間を利用して桟橋で潜っていたオタマサが、12年ぶりにダンダラスズメダイの幼魚と再会を果たした。
それが上の写真だ。
オタマサによると、狭い範囲にダンダラスズメダイの幼魚が合計3匹いたという。
連絡船接岸場所は普段なかなか立ち入れないところながら、連絡船欠航中などを利用し、これまで何度かタンクを背負って潜ってはいる。
けれど、これまでダンダラスズメダイと出会ったことはなかった。
なにはともあれ、無くしてしまったと思われた水納島のダンダラスズメダイの記録が、こうして新たに手元に。
…とホッとした途端、先述のかつて撮った写真がひょっこり出てきた。
キチンと撮られた写真がある以上、もはや無用の長物的ショボい写真ながら、桟橋脇の子が12年ぶりの再会、ということがわかったのは、この写真についている日付データによる。
2006年といえば、フィルム写真用のハウジングがついに死亡し、かといってデジイチを新規に購入する財力も無く、細々とコンデジで写真を撮っていた過渡期だった。
その間コンデジですら撮ることあたわず、「目にしただけ」で終わってしまった一期一会級の生き物たちが、いったいどれくらいいたんだろう……。
それはともかく、ダンダラスズメダイの幼魚が今後ポツポツ増えてくれば、やがてオトナも観られるようになるかもしれない。
もっとも、幼魚の可愛げな体の配色とは異なり、オトナは観てうれしくなるような色合いの魚ではないけれど…。
※追記(2020年1月)
オトナにはいまだ出会えていないけれど、2019年シーズンが終わってから訪れてみたカモメ岩の浜のインリーフで、人生最小級の激チビターレに出会った。
そのサイズ、たったの5mm。
…といっても3cmほどの幼魚とさほど体色が異なるわけでもないから、そういう意味でのインパクトはなかったけれど、どうやらコンスタントにダンダラスズメダイのチビターレが水納島に来ているらしい。
オトナに出会える日も近いかもしれない?
※追記(2021年6月)
場所はまったく別ながら、上の人生最小級激チビターレと出会った1ケ月後に桟橋脇に潜ったところ、久しぶりにノーマルサイズの幼魚に出会った。
けっして多くはないけれど、ポツ……ポツ……と出会える幼魚たち。
この調子なら、きっといつかオトナに……。
※追記(2022年12月)
いきなり「オトナ」とはいかなかったものの、2022年の海水浴シーズン終了後のビーチエリアで、ダンダラスズメダイの若魚と人生初遭遇!
成長すると14cmにもなるというから、8cmほどでこの色味だとやはり「若魚」なのだろうけど、これまでずっと眼状斑があるチビしか観たことがなかったから、ビーチの波打ち際からほど近い場所でこの姿を目にしたときにはかなり興奮してしまった。
ダンダラスズメダイはダンダラスズメダイ属なのでクロソラスズメダイとは少し異なるグループながら、その暮らしぶりはわりと似ているようで、彼らもまた自らの縄張り内でエサとなる藻を育てるのだそうだ。
観ているとたしかに藻食で、ビッシリ生えている藻をしきりについばんでいた。
藻をついばんでは、邪魔な砂泥部分をペッ…と吐き出す。
ただ、その合間に闖入者であるワタシを威嚇するものだから、↓こうなることが多かった。
藻をくわえたままこちらに向かってくるのだ。
藻をついばんでからこちらに向かい、ペッ…と吐き出す一連の様子を観ていると…
…なんだか「これでも食べなさい」とばかりに、ダンダラスズメダイから施しを受けているみたいだった。
たしかに歳末ではあるけれど…。