全長 8cm
通りかかるたびに、
ん?
と、ひっかかるハゼがいつも同じ場所にいた。
ヒメダテハゼに見えるんだけど、ちょっと違う気がするのだ。
しかしビーチの中でもフツーに見られるヒメダテハゼを、わざわざ水深20mでじっくり観ようという気にならず、そのままずーっと
ん?
という存在のままにしていた。
ようやくカメラを抱えてそこを通りかかる機会を得たので、撮ってみたところ………
案の定、ヒメダテハゼとは異なるハゼだった。
当時の手持ちの図鑑では、まだ名前がついていないハゼだった。
そして2021年2月に刊行された「日本のハゼ」新訂増補版でもなお、いまだ和名はつけられていない。
ヒメダテハゼそっくりのこの魚、そもそも縞模様の色合いが違うから区別がつくのだけど、ビミョーな場合は、腹ビレを観ればわかりやすい。
ヒメダテハゼの腹ビレが無地なのに対し、このダテハゼの仲間のそれには、ラインが入っているのだ。
ひとたび区別がつけば、いちいち腹ビレのラインをチェックせずとも、ひと目で「ヒメダテハゼとはなんか違う…」ってことに気づくはず。
彼が周囲に放っているオーラが、きっとヒメダテハゼとはまったく異なるのだろう。
彼らが一緒に住んでいるのは、今のところニシキテッポウエビしか目にしたことがない。
ところでこのハゼ、図鑑の説明を見てみると、
「内湾の湾口に生息する」
と断言されている。
本来水納島の砂地のポイントは、そういう環境ではない。
が、オニハゼの稿でも触れたように、徐々に、しかし着実に、こういった魚が分布を広げていける環境になっていく傾向にあるのかもしれない。
たしかに近年、出会う機会が随分増えている気がする…。