水納島の魚たち

ゴイシギンポ

全長 7cm

 体側の碁石模様が特徴のゴイシギンポ。

 図鑑的には普通にいるように扱われている。

 けれど、よく似ているイシガキカエルウオよりもさらに浅いところを好むためか、フツーにボートダイビングをしていると、観たいと思ってもそうそう出会える魚ではない。

 かつてフィルムのカメラを使っていたときは何度か撮った記憶があるものの、デジイチになってからワタシは出会ったことすらないかもしれない。

 ところが今年(2018年)、ヘビギンポ類の婚姻色を観るべく普段は滅多に入り込まない浅場で岩肌をサーチしていたところ、このゴイシギンポ、実はやたらと数多いことに気がついた。

 ここ十数年間というもの、一度も写真を撮る機会がなかったことを思えば、一生分のゴイシギンポと出会ったようなものだ。

 そりゃたしかに、こんだけいればまったくの「普通種」。

 水納島に来た当初はシーズン中でも随分ヒマだったから、ボートダイビングであってもこういう浅いところまで入り込むことがよくあった。

 だから以前は、ゴイシギンポとも出会えていたのだ。

 あらためてゴイシギンポを観てみると、とってもカワイイ。

 顎にある赤いニコちゃんマークが、まるで初めて口紅を塗ったおしゃまな女の子のよう。

 ちなみに、本来の口はニコちゃんマークよりも上側にあるので、赤いラインが口と勘違いしないようにご注意を。

 追記(2021年11月)

 ゴイシギンポといえば、リーフの切れ込みの奥の奥、オーバーハングで暗がりになっているようなところにいるもの…

 …とばかり思っていたところ、浅いところではあるけれどボートを停めているくらいのフツーにボートダイビングで訪れるような明るい場所、それもサンゴの上に、2cmちょいほどのチビターレがいた。

 カメラを向けるとすぐに逃げちゃうかな…と思いきや、けっこうお利口さんで、カメラを気にすることなく食事もしていた。

 あれ?ゴイシギンポも藻食性ですよね?

 でもこれは生きているサンゴなのに、その表面を齧るって??

 ブダイか何かが表面を齧ったあとに生えている藻を食べているんだろうか。

 それとも、ブダイのようにサンゴごと齧ってポリプのなかの褐虫藻を食べているんだろうか。

 普段はゴイシギンポがこんなところにいるところを目にしたことがないだけに、やけに新鮮かつ不思議なシーンだった。