水納島の魚たち

ハクセンスズメダイ

全長 6cm

 ミヤコキセンスズメダイをじっくり観るべく、リーフの上の浅い浅いところを11月半ばに訪ねてみたところ、季節の違いのためか、梅雨時にはやたらと集まっていたミヤコキセンスズメダイの姿はポツポツ程度で、目立った存在ではなくなっていた。

 そのかわり、梅雨時にはまったく印象に残っていないこのハクセンスズメダイたちが、リーフ上のいたるところでやけに活発に動き回っていた。

 「いたるところ」というのは誇張でもなんでもなく、ホントに個体数がやたらと多い。

 しかもみんながみんな、この調子で一年中過ごしていたら体がもたないだろうと思えるくらいのハイテンションで、同じような場所に住むミヤコキセンスズメダイと鉢合わせると、すぐさま追い払う気の強さも見せていた。

 スジブチスズメダイと模様が似ているけれど、スジブチスズメダイの白線は体の真ん中よりもやや前にあるのに対し、ハクセンスズメダイの白線はほぼ真ん中にあるから、パッと見で違いが分かる。

 ルリスズメダイの仲間のスジブチスズメダイも喧嘩っ早いとはいえ、ハクセンスズメダイはイシガキスズメダイ属の魚だそうだから、気の強さは折り紙付きだ。

 こんなにたくさんいるそれぞれがみんな活発だったなら、梅雨時のターボスネイル生息密度調査の際にだって印象に残ったはずなのに、全然記憶の片隅に欠片すら無い。

 それは、ミヤコキセンスズメダイとは逆に、梅雨時は地味に暮らしているけれど、この季節になるとテンションが跳ね上がる…ということなのか、それとも単にワタシの豆腐脳の記憶力のなせるワザということなのか。

 図鑑によると10cmくらいまで成長するということのようだけど、たくさんいて活発に泳ぎ回っているハクセンスズメダイたちはみんな5〜6cmほどで、なかにはオレンジがかっているものも観られた。

 体色を変えて興奮モードでハイテンション……

 やはりこの活発さは、繁殖にかかわるやる気モードなのだろうか。

 落ち着きがないオトナたちがたくさんいる一方、子供たちの姿もフツーに観られた。

 3cmほどのチビターレで、オトナにはない大きな眼状斑が子供の印。

 ハクセンスズメダイたちもミヤコキセンスズメダイ同様リーフの上の浅いところが大好きなので、通常のボートダイビングでは会うことはできない。

 それにしても、大潮の干潮時には干出してしまうような浅い浅いところで暮らしている彼らは、本格ストロングスタイルの爆裂台風が襲来している際の大荒れのときには、いったいどこでどのようにして難を逃れているんだろう??

 追記(2022年11月)

 このテのスズメダイたちは、リーフ上の浅い浅いところで暮らしているもの…とばかり思っていたところ、波打ち際が岩場になっているところでようやくハクセンスズメダイの激チビターレに出会うことができた。

 出会ったときにはまさかこのチビターレがハクセンスズメダイとは思わず、きっと(個人的に)未知のスズメダイに違いない…と大いに盛り上がって撮っていたのだけれど、後刻調べてみてビックリした。

 オトナとチビチビで色柄が異なるというのはスズメダイにはありがちながら、情報社会の昨今では実際に海で出会う以前からすでに知っているということが多くなっているだけに、久しぶりに新鮮なオドロキを味わうことができた。

 チビターレは1cmほどでしかないのにオトナ同様単独で暮らしており、うなりで体が前後左右に揺さぶられるなかで他のスズメダイたちと張り合いながら、元気に健気に暮らしていた。