全長 15cm
柄といいサイズといい、けっこう存在感があるチョウチョウウオ。
この鮮やかなオレンジの模様を誇っているかもしれない彼らとしては、「鼻黒」なんてのは実に不本意な名前だろう。
たしかに鼻のあたりは黒い。
だからといって、なにもわざわざそこに注目しなくなって……。
ミスジチョウのように狭い範囲に数多くいるわけではないけれど、さりとて岩場でも砂地のポイントのリーフ際でも出会う機会は多く、たいていペアでいるハナグロチョウ。
ただし比較的大型でそれぞれの縄張りが広いからか、こうして仲睦まじくしているペアのすぐ近くに他のペアがいるということは滅多にない。
なので不意にペア同士、もしくは1人きりで暮らしているオスがペアに出会ってしまうと、けっこう激しいバトルを繰り広げる。
けっして自分のパートナーのメスには近づけさせないぞというゆるぎない決意を漲らせつつ、横恋慕オスを排除するハナグロチョウ男子。
その勢いに気圧されたのか、横恋慕オスはスゴスゴとその場を去っていった。
ところで、サンゴのポリプを主食にしているチョウチョウウオの種類は数多く、とりわけ幼魚期は特に偏食気味、というものが多い。
つまりオトナになるとサンゴのポリプだけではなくて、付着藻類とかなんとかあり合わせのものを食うことができるのに、子供のうちは
「あたしサンゴのポリプしか食べられないしぃ〜」
というワガママさんたちなのだ。
そのワガママのせいで、サンゴ礁が壊滅してしまうと生き続けられなくなってしまうのである。
このハナグロチョウチョウウオもそのような種類で、オトナになるとふてぶてしくさえあるほどながら、幼魚の頃はサンゴにそっと寄り添って暮らしている。
写真の彼女はまだ幼く、サンゴのポリプじゃなきゃいや〜、と言っている年頃だ。
不思議なことに、ハナグロチョウの幼魚というと、出会うのはたいてい500円玉サイズより大きな子で、まだ1度も1円玉サイズほどのチビチビに出会ったことがない。
サンゴの周辺から離れることがないどころか、枝間の奥の奥でひっそりとしているのだろうか。
幸いハナグロチョウのチビたちを養える程度にサンゴは元気だから、今後のチャンスに期待しよう。