全長 2cm
水納島で最もフツーに観られるイソハゼといえば、このハナグロイソハゼだ。
ヒトによっては「それはシロイソハゼでしょう」とおっしゃるかもしれないけれど、こと砂地のポイントでなら他の追随を許さない(※個人の感想です)。
ただ困ったことに、このイソハゼには体の色が随分異なるタイプが見られる。
おそらく生活環境に合わせているのだろう、サンゴの上にチョコンと乗る機会が多い環境で暮らしているものは、冒頭の写真のように赤味が強くてアオイソハゼに似ているのだけど、リーフ際の、砂底に死サンゴ石がたくさん転がっているようなところにいるハナグロイソハゼは↓こんな感じになる。
クリアー度全開カラー。
似たものばかりで肉眼では区別がつけられないものが別々の種類ということが多いイソハゼの仲間たちにあって、これほど見た目が違うのに同じ種類と言われたら、もう何が何やらわからなくなる。
そんなアナタも心配御無用。
赤味が強かろうとクリアーになっていようと、彼らの胸ビレ付け根付近には、「ハナグロイソハゼ印」がついているのだ。
矢印の先に見えるハイフンのような模様は、体の模様ではなく胸ヒレについている模様で、他のイソハゼの仲間には観られない(はず)。
おかげで、隠れ家から上半身を出しているだけでも…
…ハナグロイソハゼってわかっちゃう。
このハナグロマークさえあれば、赤っぽかろうが透明であろうが、ハナグロイソハゼと思って間違いなしだ。
< でも小さい魚のそんな模様なんて、見えないんですけど…。
そりゃそうだ、こんな模様の有無など、撮った写真で確認しなきゃ、クラシカルアイではどうにもならない。
そもそもクラシカルアイにとってのイソハゼなんていったら、せいぜいファインダー越しでようやく楽しめるサイズなんだから、肉眼であれやこれやと種類を区別するのは諦め、とにかく様子を観て撮影、しかるのちに写真で種類を見分ける以外に手はない、と開き直ることが肝要だ(※個人の感想です)。
だいたい「ハナグロイソハゼ」という名前自体、いったいどの鼻が黒いんだ?ってなもんじゃないですか。
どんな色でもハナグロイソハゼとわかったところで、彼らをじっくり観てみよう。
オスは冒頭の写真のように背ビレの前側がビヨ〜ンと延び、メスは伸びないということで区別できるらしい。
他のイソハゼ類同様たいてい単独で暮らしているけれど、なんとなくながらオスの縄張り内にメスがいるような気がする。
↑これを撮ったのは1月のことで、左にいるメスは穏やかだったし、右のオスはことさら興奮モードというようには見えず、このあと特に2匹にロマンスが芽生える気配は醸し出していなかった。
オスとメスは普段から、このようにちょくちょく出会っているんじゃなかろうか。
1人きりでいるように見える子が、どこかに向かってアピールしているように見えることもある。
砂をかぶっている死サンゴ石の上にチョコンと載っていたクリアタイプを観ていたら…
ピョンッ!と跳ねて口を開けた。
何かを威嚇しているんだろうか?
ひょっとして、レンズ面に映っている自分の姿をライバル視していたとか?
リーフ際の浅いところでたくさん観られるものだから、ハナグロイソハゼは浅いところにいる種類なのだ思い込んでいた。
そのため30m超とけっこう深いところで出会ったイソハゼを、ハナグロイソハゼとは思わず、誰か別のイソハゼと思って撮ってしまった。
ある特徴のために、別のイソハゼに見えたのだ。
その特徴とは……
寄生虫!
ホシノノカンザシという名前がついたカイアシ類で、泳ぎ回るものから底生のものまで様々な魚に寄生するタイプだからよく見かけるとはいえ、なにもこんなに小さなハゼにとりつかなくても……。
でもこの寄生虫のおかげで「おっ?」と思い、水深30m超のあたりにもハナグロイソハゼがいることを知ることができたのだった。
ホントにハナグロイソハゼかな?
寄生虫に目を奪われつつも、胸ビレ付け根を指差し確認……
ハナグロマーク、よぉ〜し!