水納島の魚たち

ヒメシノビハゼ

全長 5cm

 エビとハゼが共生している様子は、なにもタンクを背負って潜らなきゃ観られない、というわけではない。

 種類は限定されるものの、ビーチで水面に浮かんでいるだけで、普通に観ることができるものだっているのだ。

 水納島の海水浴場で最も数多く観られる共生ハゼが、このヒメシノビハゼだ。

 海底の砂と同化したような体色だから、けっして煌びやかでもビューティホーでもないけれど、なにしろ数が多い。

 その密度たるや、ひょっとするとそれぞれのパートナーのエビの巣穴が砂中で複雑に絡まりあいつつ、全部繋がっているんじゃなかろうかと思えるほどだ。

 探すまでもなく観られるおかげで、巣穴から出て来たエビがワッセワッセと砂を外に運び出しているそばで、ジッとハゼが見張りをしている様子もいつでも観ることができる。

 ビーチでヒメシノビハゼとともに暮らしているのは、このエビちゃん。

 おそらくモンツキテッポウエビ。

 ヒメシノビハゼが白っぽくて目立たない代わりに、エビは濃い目の体色で、しかもモゾモゾ動いてくれるものだから、慣れない方でもすぐに気づけるようになるはず。

 海水浴場で暮らしているくらいだから、ちょっとやそっとのことじゃ巣穴に逃げ込んだりしない。

 少し気を遣ってあげてそぉ〜っと近づけば、エビちゃんが砂を運ぶ様子をじっくり眺めることができるだろう。

 とっても浅いところにいるので、穏やかな凪の日の朝早い時間だと、揺らめくレインボウ光線がヒメシノビハゼをエレガントに演出していることもある。

 浅い浅い水中ならでは。

 真昼間では光がレインボーにならないので、チャンスは早朝か夕刻だ。