水納島の魚たち

ヒラベラ

全長 15cm(写真は4cmほどの幼魚)

 いつでもどこでも会えるわけではなく、むしろ観たいと思えば思うほどなかなか会えないこのチビターレ。

 もっとも、冒頭の写真はまだフィルムで撮っていた頃のものだから、当時からチラホラ出会う機会があったことは間違いない。

 テンスの仲間の他の稿でたびたび触れているように、四半世紀ほど前はこのようなテンス類の幼魚についてはほとんど情報がなく、魚種同定のプロに伺っても「お手上げ」というご返答をいただくだけだった。

 その当時から、ひょっとすると冒頭の写真のチビと同じ種類なのかな?とうすうす思っていたのが↓こちら。

 これまた四半世紀前に瀬能さんにお尋ねした際には、さしもの彼でも当時の情報量では「お手上げ」だったチビだ。

 同じくらいのスーパーファインサンドと比してみると、下の黄緑色のほうがより小さいサイズらしいけれど、今こうして見比べてみるとピンと立てている背ビレの形が違うかも……。

 その後テンス類の幼魚情報量がデジタルカメラ時代に入って格段に増えたおかげで、黄緑色のチビターレはおそらくヒラベラのチビターレであろうということで落ち着いているようだ。

 では冒頭の写真の子も同じヒラベラなんだろうか。

 ワタシがこれをヒラベラのチビだと思っている根拠は、「ベラ&ブダイ」に掲載されているヒラベラの幼魚の写真に似ているから、という理由以外にないので、くれぐれも鵜呑みにしないようご注意ください……。

 いずれにせよこれらのチビターレとの遭遇率は、ホシテンスに比べれば圧倒的に低く、立派なオスとなると過去に観た(認識した)覚えがまったくない。

 かろうじて、メスになっているくらいのオトナのヒラベラらしき記録はあった。

 これまたホントにヒラベラかと問われても確たる根拠は示せないのだけれど、ビミョーな位置にこのような黒点があって、なおかつこういうフォルムをしているテンス類はヒラベラ以外にない、という消去法による。

 でもこの黒点に注目してみると、冒頭の茶色いチビの同じような場所にも、相対的にもう少し大きめの黒斑が見える。

 てことは、やっぱり冒頭のチビもヒラベラってことか?

 いずれにせよなにげにレアなテンスの仲間なので、貴重な機会を夢おろそかになさいませぬよう……。