全長 35cm(写真は10mmほどの幼魚)
パッと見だけだと、キツネベラのチビターレと寸分たがわぬ色柄に見えるヒレグロベラ・チビターレ。
しかし実際は寸分どころか大分違っている。
キツネベラ・チビターレの「ブルマ」とは違い、ヒレグロベラ・チビターレはなぜだかブルマがセパレートになっているのだ。
キツネベラのチビと同じようなタイミングで出現し始めるヒレグロベラのチビは、かつての水納島では春から初夏にかけてチラホラその姿を見かけていた。
ところがここ5年〜10年だけみると、出会うのはキツネベラのチビのほうが圧倒的に多くなっていて、少なくとも砂地のポイントでは、ヒレグロベラのチビには滅多に会えなくなっている。
そのかわり昔も今も、若魚からオトナはいつでも会えるお馴染みの魚だ。
幼魚は同じような柄なのに、チビとオトナの出現頻度がまったく逆になっているヒレグロベラとキツネベラ。
そっくり度合いは幼魚の頃がピークで、その後の様相はだんだん「赤の他人」になっていく。
2cm弱ほどになると……
顎からお腹にかけて黒ずんでくる。
3cm〜4cmほどになると…
頭部の黄色は残ってはいても、早くも幼魚の可憐さは消え去っている。
ここから先は、サイズと色柄の変化は個体差があるようで、この大きさだからこの色、というものではないようながら、尾柄部の黒模様は消えていき、体全体が黒ずんでいく。
この写真の子で5cmほどだったろうか。
みんながみんなこのように黒っぽくなるのかどうかは不明ながら、この黒っぽい体でウロウロしていると目立つものだから、ついつい撮ってしまう。
で、このまま黒くなっていくのかというとそういうわけではなく、10cmくらいになると……
今度は逆に黒い部分が限られてくる。
そして30cmほどのオトナになると……
ホンソメワケベラクリーニングを催促しているところなので、多少赤味が強くなっているけれど、黒い模様はこんな感じ。
よく見ると、チビターレの頃はセパレートされていた2つの黒い模様が、チビターレの頃には黒くなかったところで繋がってひとつになっている感じ。
そして腹ビレが白かったのはチビターレの頃だけで、あとはその名のとおりヒレ黒ベラになる。
なんとも手の込んだ体色変化だ。
これくらいのサイズになると、完全にタキベラの仲間ならではのふてぶてしさを発揮していて、エサを探すにも何をするにも、怖いものなしといった雰囲気になる。
エサを探す際は、リーフ際から転石帯ゾーン、そして砂底まで広範囲をウロウロしている。
死サンゴ岩にいた何かを眼光鋭くロックオンしているところ。
サンゴの枝間にいた何かをチェックしているところ。
その他、オビテンスモドキが小石を引っくり返しながらエサを探しているところや、ヒメジ類が砂底を物色しているそばにずっとついていたりと、役に立つものは誰でも利用するヒレグロベラは、同じように豪快に砂底や礫底をほじくり返すタレクチベラにもつき従っていることがある。
ただし同じ目的の魚は他にもいるため……
…水戸黄門御一行様になってしまう、ということはヘラヤガラの稿でも触れたとおり。
この場合ヒレグロベラの実力からすると、その役どころは風車の弥七あたりか。
とにかくオトナのヒレグロベラは悠々自適、快適優先の気ままな暮らしぶりはエピキュリアンといったところで、思わず泳ぎながらアクビも出てくる。
ヒレグロベラ・アダルトの暮らしぶりをずっと観ていれば、シアワセに暮らす秘訣がわかるかもしれない?
そしてこういう親の血をちゃんと引いているチビターレだって、もちろんアクビをする。
チビターレたちもまた、けっこう自由気ままに暮らしているようだ。
※追記(2023年5月)
キツネベラに比べると遭遇頻度はけっして多くはないヒレグロベラのチビターレだけど、今年(2023年)4月、ついに人生最小記録を更新した。
おそらく実測は1cmに満たないと思われる、ヒレグロベラの激チビターレ。
↑このように撮るとわからないけど、背景が暗いところでピントが隅々まで合うように撮ると…
スケルトーン♪
きっと浮遊生活を終えて定着し始めたばかりなのであろう激チビターレ、これくらいの頃には白い点々模様もあるということを初めて知った。