全長 35cm
ハリセンボン類の顔は、擬人化できるほどに表情豊かではある。
にしても、このヒトヅラハリセンボンがとりわけ「ヒト面」とわざわざ名前に冠されているのはなぜ?
その顔を拝見してみても……
……たしかに愛嬌はあるけれど、他のハリセンボン類に比べてひときわヒトの顔にそっくりとは思えない。
なのになぜヒトヅラ??
…と長年不思議に思っていたら、なんとこのヒトヅラハリセンボンのヒトヅラとは、魚の顔のことではなくて、背中の模様のことなのだった。
背中の模様とは、↓こちら。
髪の毛、両目、鼻に口……
おお、たしかに人面。
まさか背中にヒミツがあったとは……というか、かなり意表をつくネーミングだ。
ちなみにこの髪の毛部分の模様が乱れているオトナもいる。
これはけっこうデカい老成魚だったんだけど、年を取ると模様が乱れてくるんだろうか。
ハリセンボンより3周りほど大きいヒトヅラハリセンボンは、ハリセンボンのように他に何もない砂底でポツンといることはまずなく、たいてい隠れ場所になる岩陰やサンゴがすぐ近くにあるところにいるか、そもそも最初から隠れていることが多い。
ハリセンボンのサイズに慣れていると、ヒトヅラハリセンボンはかなりでっかく感じるから、覗いた岩陰にこの顔があると……
けっこうビックリすることになる。
隠れ家にしやすい場所が多いからだろうか、リーフエッジからリーフ上あたりでよく観られるヒトヅラハリセンボンは、日中見かけるときはたいてい隠れ潜んでいる。
ナリはでっかくともビビリなのはハリセンボン同様で、このように陰に潜んでいるヒトヅラハリセンボンの顔を拝もうとすると、微妙に迷惑そうに体の向きを変える。
かなり窮屈な場所に隠れているときは、すぐさまそこから逃げ出してダッシュ…というわけにはいかないから、迷惑そうにしながら体の向きを変えるところを観ていられる。
ところが、いつでも逃げ出せるような場所で休憩している場合は、すぐさまそこから脱け出し、わりとアクティブにサッと逃げていく。
ひとたび「逃げるに如かず」状態になると、案外素早く、起伏に富んだリーフ上の地形を巧みに利用してスイスイ泳ぐヒトヅラハリセンボン。
でもやっぱりジッとしていることが多いからか、それとも単に体のデカさゆえなのか、時にはこういう事態になっているものもいる。
コバンザメのチビチビたちが、なぜだか大集合。
たしかにヒトヅラハリセンボンならくっつく面積には事欠かない体だから、コバンザメにとって便利なのかも。
でも日中いつも同じ場所にいるヒトヅラハリセンボンにくっついていたら、あまり広範囲を移動できないんじゃないのかなぁ??