全長 15cm
このテの魚はすべて「アカマツカサの仲間」で済ませてしまう方々も多いかもしれない。
けれど、アカマツカサの仲間もなにげに種類は多く、つぶさに見るとなかなかに美しい。
その美しさに注目したいところながら、ついつい脇役の脇役のそのまた脇役くらいに甘んじてしまっている彼らの仲間。
みんな「アカマツカサの仲間」になるのも仕方のないことかもしれない。
とはいえ、普段よく目にしているモノと観たことがないモノとの区別くらいはつく。
写真の魚は、岩場のポイントの崖の下、水深30m超の深い海底付近にいた。
窒素でちょっぴり心地よくなっていたかもしれない豆腐脳ではあったけれど、ひと目で初めての出会いであることがわかった。
こうしてストロボを当てるとあまり目立たないけれど、目の後ろと、左右の鰓蓋の赤いラインが、深い海中ではひときわ濃い色になってよぉ〜く目立っている。
そのあたりに注目したのだろう、この魚、その名をホホベニイットウダイという。
なんとも艶っぽい名前である。
しかしその「頬紅」は、見ようによっては…
……ハチマキに見えなくもない。
図鑑によれば、わりと深いところを主生息域にしているそうで、通常のファンダイビングで巡る水深ではそうそう観られないようだ。
着底した途端たちどころに減圧表示が出てしまうような水深だったため、じっくりお近づきになる時間はなかったものの、写真の子のほか、若魚であろう小ぶりなサイズのものが5〜6匹チラホラ観られた。
その後彼女たちとの再会を求めて同じ場所に何度か訪れてみたけれど、彼女たちがいたのは、今のところ(2021年11月現在)このとき限りである。
ひょっとすると、千載一遇のチャンスをモノにしたのかもしれない。
「あ、アカマツカサの仲間ね…」で済ませないでよかった…。