7cm(写真は3cmほど)
水納島には川が無い。
川が無ければ河口も無い。
河口が無ければ、河口域が作り出す内湾環境も無い。
となれば、水納島ではそういったところを好む魚たちの姿は観られない…
…はずなんだけど、人工物が似たような環境を生み出すために、内湾性の魚が観られるところがある。
桟橋周辺だ。
自然のままであれば長い砂浜が続いているところだから、潮通しがよく波当たりもわりとある環境のため、本来ならそういった魚たちの生息には適していなかったかもしれない。
ところが砂浜を分断するように沖に突き出ている桟橋、そして防波堤などが、微妙に水が淀むエリアを作り、疑似内湾環境が出来あがっている。
なので、同じリーフ内でも他の場所ではなかなか見られないのに、桟橋脇を中心とするビーチエリアでなら観られる、という魚もわりといる。
このホシハゼもそのひとつだ。
地味地味ジミーで小さいから、ほとんどの方は目に留めない気にも留めないハゼながら、よく見るとその体表には細かな青いスポットが散りばめられていて、それなりにけっこう美しい。
美しさでは品下がるチビチビは、オトナに比べて遥かにたくさんいる。
オトナもチビチビも桟橋周辺ではやたらと個体数が多く、これまでずっと「フツーにいるハゼ」認定をしていた。
ところが、いざこのお魚コーナーに登場願おうと思ったところ、図鑑や世間一般で「オス」とされているものの写真が1枚も手元に無いことに気がついた。
これまで目を皿のようにしてホシハゼを探したことはないし、夢中になって撮ったこともないから、ついつい撮り忘れていたのだろう…
…と、今秋(2022年)桟橋脇に何度か潜ってみたものの。
「オス」の姿などどこにも見当たらない。
これまでずっと、たくさんいるチビチビやそれから少し大きくなっているものがメスで、背ビレがビヨ〜ンと長くなっている大きめの子がオスだとばかり思い込んでいた。
ところが世に数多あるホシハゼの画像や図鑑の話を総合すると、冒頭の写真はどうやらメスの色味であるらしい。
オスはもっと背ビレにまで色が出ていて、特徴的な模様まで入っているのだ。
でもかなりサーチしてみても、そんなホシハゼはどこにもいない。
最もそれっぽく見えるもので、せいぜい↓これくらい。
よりによってここからしか覗きこめない見づらいところにいたこの「せいぜい」、ワタシが勝手にメス認定しているのが↓こんな感じだから…
これと比べると、たとえ「せいぜい」でもオスっぽくはある。
よくよく考えてみると、にわかに思いついた今回のサーチにかぎらず、そもそも「オス」なんてこれまで一度も目にしたことがないかもしれない。
これは本来の生息環境ではないために、「オス」を立派にアピールするまでに至らずとも、「メス」の装いのまま生殖機能はオス化しているからなのか、それとも例によって白い砂底環境のために色味が他の場所とまったく異なっているだけなのか。
婚姻色バリバリ状態になったら、見違える色味になるのかな?
求愛行動が観られれば、それは「オス」と考えていいのかも。
…って、ホシハゼのそのような行動って、いったいどの季節に観られるんだろう?
昔から存在は知っていたのに、まったく何も知らないことに今さらながら気がついたのだった。