水納島の魚たち

ホソガラスハゼ

全長 3cm

 ムチカラマツに暮らしているガラスハゼ系は、み〜んなガラスハゼ!

 …と個人的に決めたのはいいのだけれど、ムチカラマツとは違い、何本も枝分かれしているヤギ類に住んでいるガラスハゼ系はいったい誰だ?

 それはどうやらホソガラスハゼという種類のようだ。

 ただ、他の魚でもよくあるように、白い砂底環境で海中が明るい水納島では、ガラスハゼ類を見分けるのに際して重要な手掛かりになる、赤っぽい縞模様、いわゆる「赤褐色横帯」や、ホソガラスハゼの手掛かりのひとつでもある尾ビレ付け根下部付近の黒赤褐色斑がまったく見えないものばかり。

 そのため、

 「ホントにホソガラスハゼか?」

 と問われると「わかりません」と素直に答えるしかないのだけれど、ガラスハゼと同じく、とにかくもう、何本も枝分かれしている派手なヤギ類についているガラスハゼよりも細いものは、ホソガラスハゼ!ということにした。

 もっとも、水納島の砂地のポイントには刺胞動物系の付着生物が少ないので、岩場のポイントならばともかく、何本も枝分かれしているムチヤギ類を砂地の根で見かける機会は少ない。

 ところが、なにがどうしたのか、まるで砂から生えているかのようなヤギの仲間がいて、そこにホソガラスハゼが住んでいることがある。

 矢印の先を別カットで無理矢理拡大。

 この砂底のヤギは、砂に埋もれそうになったりキヌヅツミガイ系の貝類に喰われまくったりしながらもけっこう逞しく何年も生き延びていて、年ごとにいろんな珍客が住み着いてくれる。

 ホソガラスハゼも、ときどき居ついてくれるメンバーだ。

 春先に、ペアが一生懸命産卵に励んでいたこともある。

 産卵中のメス(上側)のお腹を拡大してみると……

 輸卵管からちょうど卵が出たところだった。

 ある程度メスが卵を産み付けると、オスがすかさず受精させる。

 ホソガラスハゼが、産卵床のためにガラスハゼのようにこのヤギの肉を剥ぎ取っているところは観たことがない。 

 貝がヤギの肉を食べた跡をうまく使っていたりするんだろうか。

 というか、このヤギにたくさん絡みついている小さなクモヒトデの仲間は、卵にとって害はないのか、ホソガラスハゼはまったく気にしている様子が無い。

 さて、ここまで紹介してきたのは、ホソガラスハゼでほぼ間違いないだろうと思うのだけど(間違っていたらそっと教えてください)、では↓これはどうだろう。

 わりと深めの根に生える、やわらかめのヤギ類にいた。

 こうして見ると黒目の周りがアカメハゼばりにピンクだけれど、これは角度の問題なんだろうか?

 その他、リュウキュウイソバナでちょくちょく見かけるのが↓こちら。

 このように小枝に止まっているものはまだ透明部分があるけれど、太い幹にいる子になると……

 朱に染まりすぎて何が何やら意味不明状態になってしまっている。

 これらはすべてホソガラスハゼなんでしょうか。

 それとも他の種類なんでしょうか。

 考え始めたら夜も寝られなくなっちゃうかもしれないから、とりあえず深く考えないようにしよう…。