全長 3.5cm
サンゴハゼという名前ではあるけれど、れっきとしたコバンハゼの仲間であるフタイロサンゴハゼ。
ダルマハゼの仲間たちがもっぱらの住処にしているサンゴの仲間に比べ、コバンハゼの仲間たちが住処にするミドリイシ類は、群体が大きく成長する。
そうすると隠れ家になるスペースも増えるためか、ダルマハゼ類に比べ一つのサンゴ群体にいる個体数が随分多い傾向がある。
とりわけフタイロサンゴハゼは数多く、幅50cmくらいのテーブル状のミドリイシでさえ、大小20匹くらいいることもザラだ。
フタイロサンゴハゼが住処にするミドリイシは、アカテンコバンハゼが好むタイプのテーブル状ミドリイシよりも1本1本の枝が長いタイプ。
リーフエッジ下の浅いところから、水深20m弱くらいの根まで、そこに彼らが好むサンゴが育っていれば、その枝間で姿を観ることができる。
水納島でのボートダイビングに限っていうなら、コバンハゼやダルマハゼの仲間のなかで、最もフツーに観られるといっていいかもしれない。
もっとも、全体的に地味だからだろう、「フタイロサンゴハゼを是非観たい!」というヒトは少ない。
観たがるヒトは少なくとも、アカテンコバンハゼが好むタイプのミドリイシとは違い、枝が長い分枝間は広いのでその姿を確認しやすく、ゲストにその姿をご覧いただきやすいハゼでもある。
でもアカテンコバンハゼのように「枝間を覗けば思いがけずきれいなハゼ!」というわけではなく、地味な姿でチョロチョロしているだけだから、たとえご覧いただけても、残念ながらさほどインパクトをもたらしてはくれない。
また、ひとつの群体にいる個体数が多いからだろう、彼らはサンゴの枝間を縫うように四六時中追いかけっこをしているので、これと定めた1匹を観続けたり撮ったりするのはムツカシイ。
そのかわり個体数が多い分、ここと定めた「場所」で待っていれば、彼らのうちの誰かしらが通りかかってくれるから、わりとフツーに撮らせてくれる(サンゴの枝ぶりにもよるけれど)。
↑この写真の子が冒頭の写真に比べて色が薄いのは、まだ若い個体だから。
これだといったい何が「二色」なんだか意味不明だけど、もう少し育つと色が濃くなってきて……
「二色」っぽくなってくる(それが名の由来かどうかは知らない)。
どうせならこの大きなオトナの姿を見たいところながら、世慣れたオトナはサンゴ群体中の安全地帯を把握しているために、わりと枝間が広いサンゴとはいえ、なかなか全身を拝ませてはくれない。
でも個体ごとにある程度サンゴ群体中の縄張りがあるのか、観ているとわりと同じところを行き来していることに気づく。
その行き来するところにはたまにイバラカンザシが生えていたりするので、たとえ全身を見せてはくれなくても……
カンザシツーショット、なんてことができる。
一方、群体内序列で最下位にいるチビターレはサンゴ群体の端の方に追いやられていることが多く、オトナに比べて遥かにその全身を見やすい。
これくらい小さいとハゼの体に比したポリプが相対的に大きくなるから、なんだかお花畑にいるみたい。
さらに小さいチビチビだと、お花畑度がさらにアップする。
顔に走るライン以外、オトナと似ても似つかない姿ながら、オトナと同じサンゴでチョコマカチョコマカしているチビターレ。
それだけ観ていると何が二色なのやらさっぱり不明ではあっても、ダークなオトナよりはよほど可愛いかも?
ああしかし。
クラシカルアイの方々には、このサイズは認識不可能間違いなしなのだった…。
※追記(2025年11月)
昨年(2024年)の白化騒ぎで、リーフ際やリーフエッジ付近のミドリイシ類が激減してしまった水納島の海。
生きているミドリイシ類が暮らしに欠かせない魚たちもまた、当然ながらその数を減らしてはいるものの、98年の大規模白化の際の壊滅的状況と比べればさほどのことはなく、昨年フツーに出会えた魚たちのほとんどは、今年もなんとかフツーに出会えている。
ミドリイシ類の枝間に暮らすフタイロサンゴハゼたちも、住処となるミドリイシ類を失っては生きてはいけないところ、なんとか生き残ったサンゴに暮らしているものたちは、相変わらず元気にしている。
ただ、サンゴ類の枝先を大胆にバリバリ齧り取ってエサにしているハクセイハギなどは、エサになるサンゴが減った分生き残っているサンゴ群体それぞれへの執着が大きくなっているために、フタイロサンゴハゼが暮らすサンゴもけっこう物理的被害を受けている率が高い。
ハゼたちにしてみたら迷惑この上ないだろうけれど、ハゼを観ようとする者には、実はそれがこの上なく便利になっていたりする。
隙間が多いから、観察しやすいのだ。
その観やすさに乗じて↑この子をずっと観ていたところ…
アクビング♪
コバンハゼ同様、慎ましやかな可愛いお口でございました。