20cm(写真は4cmほどの幼魚)
他の生き物を拠り所にして暮らす魚は数多く、なかにはクラゲ類に寄り添って幼少期を過ごす魚もいる。
イボダイ亜目に属する魚たちは、その幼少期にクラゲラブな生活を送るものが多く、有名どころにハナビラウオという魚がいる。
ハナビラウオはオトナになると40cmを超え、パッと見は冴えない色形になるものの、クラゲに寄り添う幼少期はクラゲに似せる工夫の結果なのか、各ヒレがフリルつきのスカートのようにヒラヒラしていて優雅にすら見える。
ただし彼らが好んで寄り添うクラゲには沿岸域ではそうそう出会えず、水納島ではほとんど観られないから、いかにも「ハナビラウオとクラゲ」的なシーンに出会う機会はウシバナトビエイ100匹の群れに会うよりも少ないかもしれない。
なのでハナビラウオ系は誰かがどこかで撮った写真を眺めるもの、と諦めていたのだけれど、一昨年(2020年)の真夏にひょっこり姿を現してくれた。
あいにく冒頭の写真の子はハナビラウオのチビのようなフリル付きヒラヒラ衣装ではなく、いささか冴えない色形。
しかもこのチビが寄り添っているのはクラゲではなく……
…うちのボートだったりする。
ボートに寄り添う前は、いったい何を拠り所にしていたんだろう?
というか、ここにボートが停まっているのは一時的なこと。
このあと我々がこの場を後にしてしまえば、いったい彼はどうなるのだろう…。
心なしかこのチビターレも不安そうに見えた。
はてさて、このチビターレはいったい誰だろう?
当初は成長してフリル付きヒラヒラが無くなったハナビラウオかと思ったのだけど、それにしては背ビレ尻ビレの雰囲気が違っているように見える。
ではハナビラウオが属するエボシダイ科の誰かなのだろうか…と探ってみたところ、なかなか該当者に当たらない。
もう少し捜索範囲を広げ、エボシダイ科が属するイボダイ亜目の魚たちにも目を向けてみたところ、イボダイ科のイボダイにとっても似ている。
ただしイボダイの最大の特徴である「イボ」模様が無いし、イボダイの幼少期は褐色という話だから、ザ・イボダイではないっぽい。
でもたたずまいがそっくりなので、暫定的にイボダイ科の誰か、ということに落ち着くことにした。
ハナビラウオであれイボダイであれ、彼らが寄り添うクラゲに会う機会がほとんどないことを考えれば、たとえ正体不明であっても、寄り添っていたのがボートであろうとも、これはこれで千載一遇の出会いなのである。
※正体をご存知の方はテルミープリーズ。