全長 40cm
冒頭の写真を含め、この稿で使用しているイガグリフグの写真は2001年4月に撮影したもので、当時世の中に出回り始めていたコンデジの、とにかく安い低性能なものを試用していたときのことだった。
普段あまり訪れない場所で、ポイント開発っぽいつもりで潜っていたところ、砂地の根の陰に潜んでいたのがこの魚だ。
実はこの魚を見つけたとき、ワタシは既知のハリセンボン系かと思った。
でも、正面から見た顔がどうもかわいくない。
角度を若干変えてみても……
やっぱりかわいくない。
超低性能なコンデジだったから、がんばって撮ってもちゃんと写らない。
ちゅらかーぎーならまだしも、かわいくないデカいフグを、撮れないカメラでわざわざ撮ってもなぁ……
…と思いかけたのだけど。
観ているうちに、このハリセンボン系の魚、既知ではなくて観たことがないフグのような気がしてきた。
なので念のため、低性能コンデジで何枚かパシャパシャ。
低性能とはいえ、撮ったその場で写真があるというのは、フィルムに比べるととてつもなく画期的だ。
その写真をもとに調べてみたところ、既刊の日本の図鑑には載っておらず、洋書の図鑑にそれらしきものが載っていた。
その判断が正しいかどうか、さっそく瀬能さんにお尋ねしてみた。
すると例によっていつものごとく、丁寧なご返事を頂戴した。いわく、
「特徴的な斑紋により、(写真は)ご指摘の種(Chilomycterus spilostylus)に同定されます。
1993年に日本からも報告されており、イガグリフグという標準和名が与えられています。
日本で撮影された水中写真は非常に貴重だと思います。」
その名もイガグリフグということが判明。しかも少なくとも2001年当時は貴重な記録写真だったのだ。
ところで、時期的にまだフィルムで写真を撮っていた頃だったはずなのに、コンデジで撮っていたのはなぜか。
おそらく潜る前のカメラのセッティング(フィルムを入れたり電池を交換したり)が面倒で、暇つぶし程度にデジカメを持って入っていたのだろう。
今から考えると目も当てられないくらい低性能のコンデジと、既知のハリセンボン系じゃないかも……と気づくほどにたまたま回路が接続していたワタシの豆腐脳のおかげで、こうしてこの魚はここに日の目を見ることになったのであった。
あれから19年、その後一度も再会していないイガグリフグ。
当時耳に新しかったイガグリフグという名前は、あれから20年経った今に至るも個人的にはまだフツーに耳に新しいけれど、「日本で記録された水中写真」の希少価値はその後どのようになっているんだろう??