水納島の魚たち

イレズミコバンハゼ

全長 2cm

 ひとくちにサンゴ礁といっても、そこには実に様々なサンゴたちが暮らしていることはみなさんご存知のとおり。 

 ミドリイシの仲間だ、ハナヤサイサンゴの仲間だ、なんてのはかなりおおまかなグループ分けで、そこからさらに数多くの種類に枝分かれしていく。

 ミドリイシの仲間ひとつとっても、枝状になるものあればテーブル状になるもの、被覆状に広がりながら枝を出すものなどなどいろいろあって、それぞれに枝の長さや太さ、その密度、枝間の広さなどに随分違いがある。

 このイレズミコバンハゼが暮らすサンゴもやはりミドリイシの仲間で、リーフエッジ付近の浅いところでよく観られる。

 メタリックに輝くグリーンがけっこう鮮やかで、そのカラフルなボディを余さず拝ませていただきたいところ。

 ところがこれがまたサンゴの1本1本の枝がやけに太く、それでいて密集しているものだから隙間が狭い。

 枝自体は短いので、その密集している枝の隙間をチョロチョロするイレズミコバンハゼの姿を確認することはできるのだけど……

 …真上から限定。

 これほど狭い空間をチョロチョロするハゼの全身を横から拝むのは至難のワザで、奇跡的に広めの空間に奇跡的に居てくれたりしないかぎり、すなわち奇跡がダブルにならないかぎりまず不可能だ。

 不可能だから、横から撮ると……

 …顔のみ。

 それはもう、サンゴを観ただけで最初からほぼわかることなので、早々に諦めてしまうワタシはこのハゼを撮ったことなど一度もない。

 その点オタマサはナニゴトもやってみないとわからないヒトだから、無駄なアガキをしてしまうことになる。

 もっともそのおかげで、現在のところ当方に唯一残るイレズミコバンハゼの記録写真となっているのだった。